[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
魔女にかかれば
01
02 03 04 05 06 07 08 09
「お嬢ちゃん、北の森の魔女って知ってるかい?」
慣れた手つきでチーズを切り分け、それを天秤にかけて重さを計測しながら、店の主人はそんなことを言った。
針はまだ少し揺れている。
「最近、いろんな人からその話を聞くわ」
そう答えたのは、年がまだ十代半ばであろう少女だった。
「そうかい。だったら気を付けるといい。君みたいな可愛らしい女の子だと、魔女に拐われてもおかしくないからね」
「うふ、お上手ね」
主人はそんなことを言いつつも、仕事はしっかりとこなしていた。
ぴたりと止まった針を確認すると、主人は手早くチーズを袋に入れて彼女に手渡した。
「いくらかしら?」
「四シルクと五十三ペーヌでいいよ」
「随分と安くしてくれるのね」
少女は懐から小さな袋を取りだし、中から綺麗な銀貨を出した。
「お釣りはいらないわ」と言って、彼女は外に出た。
入り口の扉についた鈴の音も、街の活気に満ちた雰囲気に呑まれてしまう。
もう少し静かな方が好みだと思いながら少女はフードを深く被った。
噂は早くも街に広がりつつある。
これ以上用がないのなら、手早く去った方がいいだろう。
チーズの入った袋を握りしめて、少女は足早にその場を立ち去ったのだった。
■作者メッセージ
ミカ→どんぐりでいきますw
<2012/11/11 19:19 ミカ×どんぐり>
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS