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魔女にかかれば
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おかしい。
風で木々が揺れる音だけが響き渡る森の中で、シャドウはそう思った。
いつもなら、街の噂もあまり気にしないようなお嬢が、あそこまで気に懸けるなんて考えられない。
何か、あるのだろうか。
「……まったく、お嬢にはいつも振り回される」
ざくざくと枯れ葉の落ちた道を歩きながら、シャドウは独り言を呟いた。
空は秋晴れの澄みきった青色をしている。
今日は綺麗な星が見られそうだった。
見回りといっても、大したことではない。
ただの散歩という方がしっくりくるだろう。
むしろ、一匹になれるこのときが一番落ち着くような気がする。
こんなこと、お嬢には言えないが。
家を出てどのぐらい経っただろうか。気がつけば、シャドウは森の入り口まで歩いてきていた。
それほど遠くない場所に、城下町の城壁が見える。
いつみても、その巨大さに心を奪われてしまう。
人は、こんな高い壁を作り出せるのだ。
「……恐ろしいな」
鼻息を鳴らして、シャドウは苦笑いをした。
そして辺りを見渡す。
人影らしいものは見つからない。
ひとまず、まだ騎士共は噂に感づいてはいないようだ。
お嬢に報告して、少しは顔色がよくなればいいが。
そう祈り、シャドウは踵を返した。
その時――
「……?」
シャドウの耳がぴくりと反応する。
聞き覚えのない音が聞こえたからだ。
それは、徐々にこちらに近づいてくる。
辺りを見渡しても、その音の正体は見つからない。
やがてそれは、何か巨大なものが翼をはためかせる音だと気づいたシャドウ。
しかし、少し遅かった。
狼の視界いっぱいに、目映いまでの黄金色が広がっていた。
「……遅い!」
シャドウが家を出て何時間経っただろうか。
あまりの遅さに、カレンは声をあげた。
「何かあったのかしら」
途端に、背中に嫌な汗が流れ出す。
あのシャドウがまさか人間などにやられるとは思えない。が、あくまでもそれは人間ならの話だ。
もしあの噂が、彼女自信の事ではないとしたら。
「北の森の……魔女」
そう呟いたまさにそのとき、玄関の扉が叩かれる音が小さく聞こえた。
「っ? シャドウ?」
椅子からゆっくりと立ち上がり、カレンは恐る恐る扉に近づく。
そしてドアノブに触れて、そろりと引いた。
現れたのは、息を切らしたシャドウだった。
見ているこちらも辛くなるような息切れである。
「お、お嬢……は……はぁ」
「ど、どうしたの。まさか、騎士たちが?」
出来れば否であって欲しいその質問に、シャドウは首を振った。
「そうでは……なくて、お嬢にお客様です……」
「私に?」
「そう、私が“私”に会いに来てあげたの」
一瞬耳を疑った。
カレンの問いに答えたその声は、カレンのそれとまったく同じ声色だったからだ。
小さく開かれた扉が更に大きく開かれ、シャドウの後ろから現れたのは――。
「……私?」
自分と全く同じ姿をした少女だった。
シャドウは驚いている。そして彼女から滲み出る異様な雰囲気。
そこから導かれる答え。
「――あなた本物の魔女ね」
「クフフ、さすがはお嬢と呼ばれるだけはある。ただの“クォーター”ではないわけだ」
次の瞬間、魔女は目映い光に包まれた。
気がつけば、目の前に女性が立っていた。
髪は鮮やかな金髪で、目はとても冷たい深紅。
いかにも魔女だった。
「トレゾアだ。覚えておけ、カレン」
■作者メッセージ
トレさん登場!
合作ぽくなってきた(*^o^*)
<2012/11/14 21:47 ミカ×どんぐり>
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