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魔女にかかれば
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いでしょうね?』
そう言うと、竜は巨大な手で騎士の一人を押さえつけた。
「ふぎっ!」
巨大な手で押さえつける。
小さな体がミシミシと悲鳴をあげていた。
竜はそのままその巨大な顔を近づけて生暖かい息を吹き付ける。
騎士の目には涙が浮かんでいた。
竜はそのままその騎士をくわえ込んだ。
恐怖のあまり、騎士はびくりともしなかった。
そして、一飲みでその騎士を嚥下した。
生々しい音がはっきりと聞こえた。
喉に落ち込むそれを感じながら、竜は口を大きく開けてもう一人の騎士に息を吹き付けた。
もう限界だったのだろう。
その騎士は白目をむき、泡をふいて倒れた。
『さて、覚悟はいいかしら』
「あ……あぁ……」
腹に力をいれて先ほど飲み下したものを逆流させる。
そして、勢いよくそれをその騎士めがけて吐き出した。
体液でベタベタのそれを受けて、彼は倒れた。
すかさず竜は彼の体を押し潰す。
「がはっ!」
めりめりと骨が軋む音が手のひらを伝わって聞こえてくる。
それでも彼女の怒りは消えなかった。
『このまま、押し潰してやる』
「や、やめっ!」
騎士の救済の声も聞かずに竜は力を容赦なくかけていく。
声など出るわけもなく、ただただかすれた呼吸の音が漏れるように聞こえるだけであった。
ついに内蔵が圧迫される音が聞こえてきた。
あともう一歩、力を込めれば……。
「もう止めてください! お嬢!」
絞り出せる限りのシャドウの叫び声。
不思議とその声で力が抜けた。
よく見れば、踏み潰そうとしていた騎士は既に気を失っていた。
『シャ、ドウ……』
ゆっくりと振り向き、その名前を口にする。
真っ赤に燃えていた瞳に、理性が戻ってきた。
押さえつけていた手をどかして、シャドウのもとへと歩み寄る。
『シャドウ……私たち、助かっ……」
光が弾けるような音と共に、カレンは目映い光に包まれた。
「お、お嬢!」
もう限界だった。
意識が遠くなっていく。
人の形に戻った瞬間、彼女は地面に倒れ込んだ。
「しゃ……どう…わた、し」
いやだ、まだ死にたくない。
大切なことをまだ彼に言ってない。
私は……あなたのことが……。
「す…………」
伸ばした手は、力なく地面に落ちた。
シャドウの腕まで、あと数センチであった。
目を開けたとき、視界に写ったのは見慣れた天井だった。
はっきりとしない意識の中で、カレンはぼんやりとそれを見ていた。
(私は……)
「バウッ!」
突如、耳元で聞こえた音。
聞いたことはなかったけど、どこか落ち着くその音。
そこでカレンははっとした。
「シャドウ!」
勢いよく起き上がると、途端に目眩に襲われてベッドに倒れ込む。
「無理をするな、一度とはいえ、魔力を使い果たしたのだから」
「トレ……ゾア?」
顔を転がして横を見れば、そこには腕を組んでこちらを見るトレゾアと大人しく鎮座しているシャドウがいた。
「シャドウ! よかった、助かったのね!」
「バウッ! ワウ!」
「――? シャドウ、あなた言葉はどうしたの?」
いつまでも鳴き声しかあげないシャドウに、カレンは驚いていた。
「カレン。言いづらいが、それが後遺症というものだ」
トレゾアから言い放たれた言葉。
嫌な予感がする。
まさか……。
「お前はもう、魔女ではないのだ……」
頭を金づちで打たれたかのような衝撃が、カレンに走った。
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■作者メッセージ
書いてて一番苦しかったところp(´⌒`q)
<2012/11/28 18:20 ミカ×どんぐり>
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