PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル

トップページ > 記事閲覧
孤高の雷帝
日時: 2011/04/07 09:24
名前: セイル

どうもお久しぶりございます
Parallel world は諸事情で……
本当に申し訳ないです
今回は黒狼さん、楓さんに続くオリジナルを作ろうと
思いましてですね
狼、狐ときたのでですねそろそろ竜かなーと思います
今、意欲がないのと、忙しいので更新が今まで以上に
遅くなりますがよろしくお願いいたします

ところで話がかわるのですが
黒狼さんの名前を募集してもいいでしょうか?
メンテ

Page: 1 |

Re: 孤高の雷帝 ( No.1 )
日時: 2011/04/07 09:58
名前: スイト

うむ…雷帝ですと…ジロ…ジイイイ…

ジ「何じい〜と見てるんだよ?」

いや…別に…それと黒狼さんの名前は漢字で決めるんでしょうか?
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.2 )
日時: 2011/04/07 10:03
名前: セイル

そうですねー
できれば漢字にしたいですね
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.3 )
日時: 2011/04/07 20:48
名前: U

特にそれといった意味はありませんし、ふと思いついただけなんですが
『刹那』・・・なんてどうでしょう?
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.4 )
日時: 2011/04/16 16:23
名前: 名無しのゴンベエ

皆様たいへん長らくお待たせしました。
やっと都合が合いまして・・
本当に大変でした・・・

では、どうぞっ!!

鋭爪が肉を絶ち、鮮血が宙に舞う。
舞った鮮血が躰に返り血としてこびりつく。
そんなものは構わない。
僕はとにかく戦いたくなかった。
だけど戦なきゃ自分の命は無い。
相手だってそのつもりで襲ってきているのだから。
この争いは避けられる物じゃない。
「くそっ・・この呪人めっ!」
呪人(のろいびと)。読んで如く呪われた人間のことである。
その呪いにはいろいろ種類がある。
体に呪模様が浮かび上がるのやら、体の一部が変形するものも。
特に僕は酷く、体全身が人間異なるものに変形していた。
が、数年とかけて僕はその呪いを自発的にコントロール出来るようになっていた。
生まれてまもなくに襲われた呪いの力。
狼の・・・人狼の力。
「もう・・放っといて・・」
呪人である僕は村人の全員に忌み嫌われ、村の外れ・・・村の領地内とは言えないところに住んでいる。
それならそれで放っておいてくれればいいのに呪人がいると村が汚れると言う理由で僕を殺しに来るのだ。
僕も死にたくないから呪われた力・・人狼で対抗する。
たとえどれだけ他人が傷つこうが僕には関係なかった。
だけど、その命を奪うことだけは出来なかった。
自分の生への執着心だけで他人の命を奪うことには気が滅入った。
それどころかそれで自分の命を絶ってしまいそうだった。
僕は確かに呪人だ。
呪われて人外の狼人間だ。
でもそれを除けばただの人間に代わりはない。
僕は生きたい。呪人であろうともこの命を全うしたい。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.5 )
日時: 2011/04/16 20:42
名前: スイト

う〜ん雷帝とはまさか… ジロ…

ジンオ「さっきからジロジロ見やがって…」

だって〜それと名前が全然浮かびませんでした…(汗)
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.6 )
日時: 2011/04/17 01:09
名前: リオレイア

雷帝・・・・
そうか!ロシア帝国か!
リーナ「ロシアとやらがどんな国かは知らぬが違うと思うぞ?」

注)ロシア帝国には「イヴァン雷帝」と呼ばれる武帝がいました。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.7 )
日時: 2011/04/18 22:21
名前: セイル

「アルザ!出てこい!」
僕の名が扉越しに紡がれた。
「今日も僕と殺りあうの?」
そんなような気はしなかった。
なにやら慌ただしい雰囲気を感じ取っておきながら、尋ねることを止めはしなかった。
荒い呼吸が混じりながら切迫した声は用件を僕に伝える。
「頼むっ・・力を貸してくれ!」
ただ事ではないことは分かっていたが、忌み嫌う呪人に助けを請うほどとは思わなかった。
相当な状況に陥っているらしい。
が、僕は首を縦には振らなかった。
普段、毛嫌いして忌み嫌って必要な時にだけ助けを請うなどと虫が良すぎるのではないか?
そうだから素直になれなかった。
「貴方たちでどうにかしたらどうですか?僕は貴方たちに力を貸すことはしません。今までそれでやってこれたじゃないですか?」
「っく・・た、頼むから・・」
ちくり、と心が痛んだ。
人狼であっても僕には暖かい人間の心が生きていた。
獣のような獰猛で残虐な心も持っているが、それが表に出ることは滅多にない。
彼らを助けたい気持ちはいくらかある。
自分が思っていることにも一理あり、助けたい自分とそれを否定する自分が葛藤していた。
「なぁ・・頼む・・もう何人もやられてんだ・・・」
何人もやられた・・つまり死者が出ている事なのか?
その言葉で踏ん切りがついた。
彼らを助けるのではなく、死に行く人間を助けるためだと思えばいい。
重い腰を上げ、扉を開く。

 * * * 

家宅が盛んに炎上し、灼け焦げた死体が無数に転がっている。
さらにはまだ生きたままの人間がそいつによって頭上に摘み上げられていた。
「ぇ・・ぁ・・そ、そんな・・」
摘んでいた手が離れ、重力に従い体が巨口に落下して行く。
たった一口でそこに収められ、生々しい音が辺りに響く。
一般人は人生でこの光景を目の当たりすることは無いだろう。
食物連鎖の頂点に君臨する絶対の捕食者たる人間が他者に喰われる事など。
その光景が僕の目前に展開されていた。
生理的嫌悪を抱き、恐怖を覚えるはずのその光景に目が離れない。不思議とその場を凍てつかせていた。
ごくり・・
そいつの喉が大きく鳴り、生々しく膨らむ。
膨らみは喉を下り、腹に下っていく。
ゆっくり、ゆっくりと下り、胃袋に落ち込んで動かなくなる。
「その脆弱な体に狼の力を宿す、呪われた人の子よ。」
遙かな時を生きてきた威厳に溢れた声が現実に引き戻した。
が、それと同時に隣の村人が大きく吹っ飛ぶ。
血のこびりついた紺色の尾が揺れている。
強靱な四肢。血で黒ずんだ爪。
隻眼の碧玉が僕を見据えて離さない。
「何故ここにいる?呪人。」
    ー孤高の雷帝ー
ここ周辺で姿を現している一体の竜族。
決して群れることなくその鱗が雷の落ちる闇夜に似ているためにそう呼ばれていた。
「ここにお前の必要性はない。」
疑問の言葉を問いかけつつも雷帝は捕食を止めない。
尾で巻き取った人を口に放り舐め回し呑み込む。
かれこれ三十人程だ。
「孤高の雷帝・・どうしてここの村を襲った?」
これ以外にも問うことはある。
だが真っ先に問いたかった。
村はほかにもある。
なぜ、小規模なこの村なのか。
「・・気分だ。」
感情に連動して呪いの封が引き裂かれた。
この村には世話になった。
呪いにかかり呪人になっても世話になった人もいた。
確かに嫌悪感はあったが、愛着はあった。
そんな村を気分で襲った?
冗談じゃない。
「貴様ぁぁぁぁぁあっ!」
人間の姿を捨て、呪いの力を全開させる。
瞬く間に狼の体組織に組み替えられ、筋力が倍増する。
孤高の雷帝。許すまじ。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.8 )
日時: 2011/04/19 19:22
名前: セイル

「・・っ・・」
次に目が覚めたときは見知らぬ所にいた。
僕は・・負けた。
呪いの力を以てしても竜族には叶わなかったのだ。
情けだ。なにを思ったのか分からないが今自分が生きているという事は雷帝がトドメを刺さなかったのだ。
僕は生きている。村人全員の犠牲の上で。
「起きたか。呪人。」
「どうして殺さなかった?」
声に振り向けば雷帝。真っ先にそう問い詰める。
「呪いを操るお前に興味を持った。喰うには惜しい。それだけでは不十分か?」
「ふざけるな!この力に興味だって!?」
右腕だけを呪いを展開。拳を作る。
「私ならお前の必要性を教えてやれる。」
一瞬耳を疑った。僕に必要性?
呪人である僕に?
「それはどう言うこと・・」
「言葉のままだ。」
人間に忌み嫌われ、関わる事もできない呪人である僕に必要性など微塵もないはずだ。
「これからお前にはここで私と共に過ごしてもらう。」
「お前・・雷帝と・・?」
「私は雷帝という名前ではない。紫電(しでん)だ。」
「し、紫電?僕は・・」
「お前の名前はいらん。呪人で十分だ。」
“なっ・・”と短い疑問を漏らし、反論するまえに紫電は言葉を続ける。
一つ。常に呪人の姿を解放する事。
二つ。食事は自らが行うこと。
「最後に、言うことを聞かなければお前が私の飯だ。」
それと同時に“飯”だと。
顎で外を指し示し、眼でさっさと行けと指図する。
仕方なくそれに従い、外へ・・
「お前にその気があるなら私は構わんぞ。」
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.9 )
日時: 2011/04/20 07:52
名前: リオレイア

おおお!
是非とも僕を「飯」にして下さい!
出来ればその前に背中に乗せていただければ……
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.10 )
日時: 2011/04/20 09:36
名前: セイル

リオレイア様
紫電「その気があるなら来るがいい丁重に扱ってやろう」
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.11 )
日時: 2011/04/20 10:42
名前: サバラン

僕も「飯」として食べてしてください!!
消化しても良いので…
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.12 )
日時: 2011/04/20 16:15
名前: スイト

僕も参加で…
僕は夕飯にしてもらえれば…
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.13 )
日時: 2011/04/23 00:12
名前: セイル

僕は逃げる気はなかった。
紫電は僕に逃げる気が無いことを悟っていた上でそう言ってきたのだ。
僕の・・いや呪人の必要性。
それだけが紫電と僕を繋いでいた。
「一体・・僕に何があるって言うんだ・・」
唐突に鼻を獣の匂いがつく。
僕は呪人であり、獣でもある。
人間の時は料理ができるが、今は今だ。
狩りをするしかない。
人間よりも格段に利く鼻を頼りに上体を降ろし、今だけは完全な狼に還る。
強靱な四肢を迅らせ、森を駆ける。
新緑の世界には目立ちすぎる純白の兎。
視界に捉えた瞬間に腹が鳴り、獣の本能が訪れる。
邪な表情を満面に浮かべ、四肢が覚醒する。
前方に大きく飛び出す寸前に咆哮を上げる。
その咆哮に気付く兎。
だが、すでに遅し。
逃げる準備もないままに牙は兎を捉えた。
「ワォォォッ!」
鮮血を口から滴らせ、再び咆哮を上げた。
人間ではなく、呪人・・狼として。
兎を貪る。
とにかく腹が減っていた。
己のために他者を殺しているのだ。
己が生きるためには他者を殺害するのは仕方ない事だ。
ある程度は肯定も理解もしている。
だが、それは“生”への犠牲で無駄ではない。
無駄で最も畏れているのは己の欲望でただ他者を殺すこと。
「ゥゥ・・グッ・・・・」
この“捕食”は生きるための犠牲。
ただの“欲望”による殺害ではない。
しかし、今のこの行為は最も己が畏れている“欲望”による殺害に近いのではないのか?
本能に虐げられた理性がそう感じていた。
己の命を延ばしたいが故の殺害。
「グルルルゥ・・」
柔らかい獣肉が喉を下り、腹を満たす。
ほんのり甘みを帯びた鮮血が喉の乾きを癒す。
人間であった僕は今、完全に獣に墜ちていた。
人間には戻らせない。
つまらない人間でいるよりも狼でいたほうが、遙かに開放的だ。
社会に縛られることもない。会わない奴は殺めてしまえばいい。
「アルザ・・?アルザなの?」
目前の光景が信じられないかのように女性の声が耳をつく。
懐かしい、どこかで聴き慣れた声ーー
それに振り向けば、人間。
兎よりも肉付きが良く、味も美味い。
さらなる食欲を発揮する本能は身体を行使させる。
感情の欠片もなく、ただ無慈悲に襲いかかった。
彼女が組み敷かれる。
血と唾液に溢れた口が開かれ、牙が顔を覗かせる。
「アルザ!」
牙をその細首に突き立てる前に理性が回帰する。
「ミリュイ・・なんでここに・・?」
彼女はミリュイ。
唯一あの村で僕に対して、偏見や軽蔑のない態度で接してくれた人間だ。
正直、嬉しかった。
紫電に村が襲われた時、生きている可能性は低いと判断していた。
ただ、紫電との関わりが切れていない今に出会ってしまったために素直には喜べなかった。
今すぐ、彼女と共に逃げ去りたい。
「ミリュイ・・今すぐに此処から去ってくれ・・」
「なんで・・?逢えたばかりなのに・・他の人はみんな亡くなったのに・・貴方と私しかもう生き残ってないのに・・?」
「ここは孤高の雷帝の庭だ・・貴方は殺されてしまうかもしれない。だから頼む。また、きっと逢いに行くから。」
彼女は最初、否定を続けたが次第に決心は揺らぎ、最終的には首を縦に振った。
僕をミリュイは優しく抱きしめ、微笑みを漏らすと僕の下から去っていく。
そして、獣の感覚を研ぎ澄まし紫電の気配を探る。
もし紫電がこの場にいたならば、この身を呈してでも止めるつもりだ。
しかし、幸いにして紫電の気配は感じ取れなかった。
小さく安堵の息を漏らし、身を翻す。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.14 )
日時: 2011/04/23 23:55
名前: U

冒頭から全部は読んでないから展開に着いていけるか分からんが
今後の展開に期待っ
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.15 )
日時: 2011/04/27 20:04
名前: セイル

「ど、どうして・・?」
洞窟に帰り、僕の前に展開された光景。
ボロボロの満身創痍になったミリュイが横たわっていた。
無数の切創を身体に負い、胸には大きな咬み痕が。
紫電の顔には僅かな笑みが。
「私の庭にいた女だ。どうした?知り合いだったか?」
あの時は気配を感じなかったが、確かに紫電はあの場面を目撃していたのだ。
その証拠に、紫電の声には確信を含んでその言葉を発している。
「・・そいつを殺せ。トドメを刺してやれ。」
絶対の紫電の命令が下った。
僕には反抗できない。反抗すれば僕は“餌”になる。
だが、僕にはできない。
ミリュイを殺すことなど僕にはできない。
「紫電っ!!」
瞬時に身体を緊張状態に引き上げ、牙を剥いて紫電に襲いかかる。
「矮小な人間め。」
片腕一本で僕は弾かれ、背中を岩盤に激しく打ちつける。
・・・敵わない。
呪人の力を持っても紫電には敵わない。
「そんなに飯になりたいのか?」
手も足もでない僕を見下して喉で笑う。
悔しいけれど、それは事実。
素直に紫電の命令に従うしかないのだ。
自分の非力に歪む顔を紫電に見せないように横たわるミリュイに寄り添う。
自然と涙が頬を伝う。
「・・泣い・・てるの・・?」
「ミリュイ・・ごめん・・ごめんね・・」
謝罪の言葉しか吐けなかった。
彼女は僕のせいでこんな事になったのだ。
僕に関わらなければ、苦しむ事もなかったのに。
「貴方を・・救えなかった罰よ・・私は・・その罰を・・甘んじて・・うける・・から・・」
僕はその細首を優しく咥えた。
彼女が僕を助けた為に僕と同じような扱いをあの村で受けた。
そんな彼女を救おうと、冷たく当たり彼女を僕から離そうともした。
だが、彼女は決して見捨てなかった。
僕と同じように苦しんで。
そして、その僕に殺されるー
もう・・十分に苦しんだ。
楽に殺してやりたい。
喉笛を掻っ切るか。
心臓を貫くか。
窒息死させるか。
もう、どうしていいか分からなかった。
「アルザ・・」
その蒼空の瞳が僕を見つめ、意識は遠退いた。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.16 )
日時: 2011/04/27 22:04
名前: リオレイア

あ……
餌となってミュリイを救うんだ!(って彼の後はミュリイの番か……)

では…早速お口の中に失礼致しますね♪
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.17 )
日時: 2011/04/30 21:02
名前: セイル

もう嫌だ。生きているのが怖い。
僕は唐突に紫電の前で膝を折った。
「紫電・・僕を・・殺してください・・」
あの晩の翌晩も人間を殺した。
その翌晩も。
紫電の思惑は分からない。何を教えているのかも分からない。
分かったのは、自分が生きていてはいけない存在だったこと。
そして・・自分の心が砕け散った事。
「そうか・・」
敵意を剥き出しにした口調が消えていた。
永い時を生きた賢者の如き言葉。
その巨躯を起こし、翼を雄々しく広げる。
「呪人よ。貴殿に問おう。“命”とは何だ? “死”とは何だ?」
「それは・・・」
“命”
それは生物が全うすべきものであり、最も尊きもの。
そして、天秤には掛けられないもの。
“死”
生物が最も畏れるもの。
そして、すべてから解放される手段。
そう、僕は紫電に告げた。
「呪人として人間に触れ、“死”と“生”を知る。それが貴殿の必要性だ。」
正常状態であったならば恐らく、耳を疑っていたであろう。
しかし、今の状態では無理があった。
ただ、“死”を望んでいたから。
「本当に死にたいのか?」
無言で首を縦に振る。
今すぐ殺してくれ。そう表情でも示す。
「私の下に来る気はないか?」
「お願い・・殺して・・」
“そうか・・”と非常に残念そうに顔を歪ませ、顔が僕の目前に寄せられた。
「その言葉に後悔は無いな?」
ねっとりと唾液が糸を引く巨口が開かれた。
幾人もの命を我が物に呑み下したその巨口が。
「後悔は・・ないよ・・」
涙を静かに一筋流して、ただ、呟いた。
次の瞬間、暗闇の肉洞に閉じこめられた。
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.18 )
日時: 2011/05/01 00:00
名前: ロンギヌス

『生と死は等価値なんだ・・僕にとってはね。』
↑(カヲル君!! 来るとこ間違えてるよ!

まるで契約されたような喰らい方だ・・もう戻れませんね・・
メンテ
Re: 孤高の雷帝 ( No.19 )
日時: 2011/05/06 21:50
名前: セイル

紫電の舌が身体を持て余すことなく舐め回す。
苦しませるようにではなく、労るように。
優しく、ゆっくり、かつ、唾液を塗り込むように。
「ぅん・・あぁ・・っ・・」
もう絶望したはずの身体が喘ぐ。
舌が身体を舐める度に粘液に隠されたザラザラが身体を撫でビクビクと反応を始める。
絶望した身体に快楽。
相反する感情の変化でさらに心は打ちのめされ、現実に沈んでゆく。
ただでさえ動かない体はもう動くことを放棄していた。
それと共に、紫電の舌にずっしりと重みを与えていた。
「生きているか?」
「・・・うん・・」
「安心しろ。丁重に扱ってやる。」
もう一度僕は頷く。
僕の肯定を認証した紫電は舌を蠢かす。
持て余すことなく舐め回された身体をもう一度優しく舐め回し始める。
「うっ・・んっ・・んっ・・・」
僕はとにかく喘いでいた。
“生”を捨て、空になった頭と本能が快楽に敏感に反応していた。
“死”を望む身体。
呪人の身体。
普遍の人間の身体と異なっていても基礎は人間だった。
喜怒哀楽があり、死にたくもなる。
快楽に反応することも。
「そろそろ、呑むぞ。」
「・・・うん。」
物心ついた子供が親に甘えるような声。
その声で僕はそう答えた。

 * * * 

やはり、喰うには惜しい。
この身にも災いした呪いの力を己の力で制御しているこの人間は珍しい。
その上、非常に美味だ。
喰らってその存在を消すには惜しすぎる。
だが、本人は死にたいと言っている。
ならばそうするしかなかろう。
私はクイッと上を向き、口内に傾斜をつける。
これで・・・2394人目。
あと何人喰らえば私は戻れるのだろうか・・

 * * * 

“生”と“死”
僕は何を知ったんだろう。
数人の犠牲で何を知ったんだろう。
「く・・ぅ・・・・ぁぁ・・」
暗闇の胃袋に収められ、身動きはしなかった。
やっと僕は死ねるんだ。
やっと・・呪人の命を全うできるんだ。
もう虐げられることも、この力で他人を傷つけなくても、命を奪わなくてもいいんだ。
唾液と体液に浸った身体。
もうこんな身体いらない。
早く溶かして。
だけど僕は苛まれるだろう。
この手でミリュイを殺したのだ。
他人の最も尊いものを奪ったのだ。
生物が最も畏れる“モノ”を与えてしまったのだ。
彼女は僕に与えてくれた。
傷ついた僕に“心”を与えてくれたのに。
僕は何も与えていない。
むしろ奪ったのだ。
彼女の命を。
「あああぁぁぁぁっっ!」
自分が恐ろしい。
今にでも狂ってしまいそうな頭を両手で抱え、喉が裂けるように声を張り上げて発狂した。
次は誰を殺す!?
隣人?知人?見知らぬ人?
嫌だ・・嫌だ・・誰も殺したくない!
もう嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

早く殺して!
早く早く早く早く早く
ハヤクハヤクハヤク!


自分の真実の姿。
人間でも呪人でもない。
ただ、無感情に息をするように人間を殺す。
それが自分の姿。
「ぁぁぁぁぁぁっ!!」
唐突に胃壁が蠢き、僕を包み込んだ。
いよいよ消化が始まるのだ。
あれだけ死をを望んでいた身体が恐怖を覚える。
死にたいと思っていたのが生きたいと姿を変えてしまう。
「っ・・あっ!・・ミ、ミリュ・・」
呼吸器さえ例外ではない。
柔らかく粘液を纏う肉壁は完全に塞ぐ。
すぐに呼吸困難に陥る羽目になり意識を失う。

 * * *
 
私は腹の膨らみに目をやった。
くぐもった声も既に途切れ、抵抗も感じられなかった。
あまりの自責に事切れたか、気絶したか。
抵抗が無いのは少し興ざめだが。
もともと私は人間だった。
私とて、人間だった。
呪人の影響でこんな姿。
孤高の雷帝と呼ばれるこんな姿になってしまったのだ。
元の姿に戻るためには他者の命を喰らうこと。
単に喰らう訳ではない。
他者を殺めれば体が勝手にその魂を吸収する。
それが他者の命を喰らうこと。
最初は他者を殺めることを躊躇っていた。
こんな姿では人間の命は脆すぎた。
片腕一本で数人の命を奪える。
そんなことだからすぐに戻れると思っていた。
ところがどうだ。
幾人の命を奪っておきながらまだこの姿だ。
返り血を大量に浴び、爪や牙にこびりついてもこの姿は変わらない。
それどころかより一層、竜族に染まっていくだけだった。
脆弱で傲慢な人間。
自分と同じだった種族が同等に見られない。
強靱で誇り高き竜族。
人間を見下す崇高なる存在。
そして唯一、同等に見ることができたのが彼だった。
自分と同じ、呪人の影響で人間では無くなった人間。
さらに彼はそれをコントロールしていた。
人狼の呪人。
今は私の胃袋の中で消化されようとしている。
正直、殺すには惜しい。
久しぶりに出会えた呪人だ。
必要性は教えた。
“生”と“死”について彼は理解してくれた。
ただ、心が死んだ。
まだ、必要性を受け入れるには若かったのだ。
「フッ・・また独りか・・」
私は小さな飽きを含ませて言葉を吐き出した。
“生きたい”
静寂な胃袋から囁きが響く。
外からは聴くことは不可能でも体内の声は良く響く。
「吐いてやろうか?」
“紫電さん・・”
「わかった。とりあえず吐き出そうか・・」
胃袋、食道に力を込め、彼を逆流させる。
粘液と肉壁が擦れ合い、生々しい水音が体内にはよく響く。
彼と言う生物の膨らみが私の体を逆流する。
「ん・・がぁ・・」
体液をボタボタを口からこぼし、彼を吐き出そうとする。
すでに喉元まで来ているがなかなか吐き出せない。
気を許せばまた呑み込んでしまいそうだ。
が、そんな心配をしているうちに私は吐いていた。
ゴポリと多量の粘液、体液と共に彼が地面に吐き出された。
「・・アルザよ・・貴殿はまだ生きようと望むか?」
焦点の定まらない虚ろな目は確かに私を見つめていた。
微かな力で“生”にすがりついている。
今だ口内からこぼれる体液を拭う事もせずに私は声を吐き出す
彼は・・アルザは特に言葉を発することなく、体を動かすこともなく。
ただ、頷いた。
「私の下に・・いてはくれないか?」
これにはアルザは笑顔で快く頷いてくれた。
“そうか”
心の奥から自然に漏れた言葉。
私は涙を一つこぼしていた。

メンテ

Page: 1 |

題名 スレッドをトップへソート
名前
E-Mail
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存