舌のとぐろが解かれる。
分厚い舌がらせん状ににゅるにゅると身体を這っていく。
ぐちょりとした床、口内の粘膜に着地する。
唾液腺なのだろうか、押せば押すほど粘ついた唾液があふれてくる。

「う〜ん、もっとあなたを味わいたいな」

そう声が聞こえると同時に、舌が鎌首をもたげて
俺の胸元から衣服の中へと進入してきた。
すでに大量の粘液を含んで滑りやすくなっている。
舌はその大きさにもかかわらず簡単に衣服の中に入ると、
そのまま俺の腹側を通って股間を包み込むようにする。
肌に直接触れる、柔らかな舌。
俺の着ている服がパンパンに張り詰める。
まるで風船でも入れているかのようだった。
暖かく、どろどろの肉に敏感な部分を余すところなく愛撫される。
大変な圧力で、しかしとろけるような感触が各部に与えられる。
布を巻きつけただけのような簡素な作りの衣服は、
ゆっくりにゅるりとはだけていく。
舌はそのまま服の中を貫通するように、服と俺を引き剥がしていく。

「うっ……くう……」

俺は舌に抱きついたまま、快感と恥辱に悶えていた。
下半身が燃えるように熱かった。
あたまがじんじんと痺れてくる。

「あなた、とーってもおいしいわ。
 ゆっくり時間をかけて、たっぷりねぶって食べてあげる」

粘液をしとどに含んだ衣服がロープのように俺と舌に縛りつけている。
いつのまにか口の中は唾液と竜の吐息の匂いに包まれていた。
ぬるぬる、ぶつぶつ、ぶよぶよ、ぐにぐに。
舌の上で快感に暴れるたびに、扇情的な感触に身もだえする。
頂点へと誘う快楽の連鎖。

布がすべてほどけてしまうと、俺は裸の身体を上あごに押し付けられ、
ぶよぶよした巨大な舌にゆっくりと舐めつけられた。
ねちょねちょ、ねばねば、くさい、あまい…
様々な感覚が交錯する中、だんだんと舌に力が込められるのを感じると、
広がっていく口の奥の空間へ絞り出されているのが分かった。

奥に行くにつれ、竜の匂いがだんだんと濃厚になっていく。
喉の奥はやわらかな口蓋粘膜がぴったりとふさいでおり、
舌の付け根とくっついて行き止まりを作っていた。

「あふぅ…ふっ…」

今にも意識を失いそうだった。
顔になにか柔らかいものがあたる。
行き止まり。

粘つくそれは、そこが体内の入口であることを如実に現している。
べっとりと顔に張り付いてなかなか離れない。
息苦しい。それでも身体の動きが止まることはなかった。
舌がその肉の割れ目に俺をゆっくりと押し付けると、
俺の頭はゆっくりとその隙間にもぐりこんでいく。
顔を粘つく喉の粘膜にこすられながら、おでこ、耳、鼻、あご……
頭が入りきる。そこはとんでもなくやわらかな粘膜に覆われていて、
あたり一面すさまじく濃い粘液が覆っている場所だった。
そんな喉の肉に頭をみっちりと、しかし優しく受け止められる。
ねちょねちょ、粘ついた水音を発しながら、肉がゆっくりと蠢く。

すでに甘い竜の吐息よりも、体内の匂いが強かった。
すさまじく濃い、竜の体内の匂い。粘液の絡みついた鼻でも強烈に感じられる。
生き物たちが死にゆく香り。竜の中に入った動物はどんなに屈強でも、やがてその血肉に。
それでも、俺は、そんな香りにさえも……

身体が熱くなる。顎を通って首までを喉肉が包み込む。
肩。身体の中で一番広いその場所さえ、ほとんど抵抗なく肉の門に沈んでいく。
にちゅり。息苦しい。でも、息ができないわけじゃない。くさい。
胸まで飲み込まれる。腕は体側にまっすぐ固定される。
身体をよじると、喉の粘液がかき回されて、泡だって、糸を引く。
ねばついた粘膜が、身体を強く挟み込んだり、離れたり。
本当に狭い空間の中で、竜の呼吸に合わせてゆっくりと弄ばれる。

ついに腰までを飲み込まれた。
動きが止まった。

下半身はいぜん分厚い舌の上に寝たままで、股間が舌の根元に押し付けられているのを感じる。
ぬるりと、舌が下半身に巻きついた。
全身さえ覆うのに充分なそれは、下半身を巨大な舌の塊に埋めてしまう。

ふと、引っ張る感覚が俺を襲う。にちゃ、にちゃ。
腹が、胸が、顔が、同時にこすれる。舌よりも柔らかい粘膜に舐められてしまっているかのよう。
ねっとりとした隙間を通って、ゆっくりと引きずり出される。
下半身を舌に包まれたまま、俺は再び舌の上に戻された。

喉と俺の間に、唾液とは明らかに違う、ねっとりと濃い粘液塊が伸びている。
そう思うが早いか、俺の頭はまた喉の肉に押し付けられる。
今度は力を込めて、一瞬でぐっちょりとした粘膜の中に上半身を閉じ込められる。
また引っ張られる。入れられる。ゆっくり引っ張る。ゆっくり入れる。

そうやって何度も粘ついた喉の奥と舌の上を往復させられているうちに、
いつのまにか俺はもう動けなくなっていた。これだけ苛め抜かれても、
身体は何故か快楽を感じていた。

「さあ、いまからあなたを食べてあげる」

久々に聞く竜の声に、俺はぞくぞくと快感に身体が震えるのを感じた。

 

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