眠りから覚めると、全身に暖かさを感じました。閉じた瞼が真っ
赤に見えるので、太陽の光が当たっているのでしょう。そういえば
、昨晩は外で寝たのでした。

 手で光を遮りながら、私は目をゆっくりと開きました。青々と澄
んだ空が視界の端から覗いています。

 起き抜けの目を擦りながら、私は徐に起き上がりました。そして
、違和感に気付きます。

 空がやけに広いのです。私は森の中に居たはずで、こんなに四方
八方に空が見えるわけがありません。一体ここは何処なのでしょう
か。

 何となしに下の方を見ると、変わった草が生えています。茶色い
茎の上に、細かい緑の葉っぱが無数に生えていて――それは、木を
そのまま縮めたような形でした。

 そして近くには、何かこんもりと土を盛ったようなものが聳えて
います。その高さは、立ち上がった私の背と対して変わりません。

 そういえば、アスター君の姿が見当たりません。恐らく彼がここ
まで私を運んできたのでしょうから、突然居なくなられては困りま
す。

 彼を捜そうとしてちょっと歩き回ってみると、俄かに足に冷たさ
を感じました。


「ひゃっ!?」


 反射的に足を退けました。そこにはちょろちょろと長細く水が流
れています。流れの源を目で追うと、彼方まで蛇のように延びてい
ます。

 あまりに見慣れない光景に、私は目が眩みました。一体此処は何
処なのでしょうか。そして、アスター君は何処へ行ったのでしょう
か。

 不安に駆られていると、耳元で小さな声がしました。


「おはよう」


 その声はアスター君のものでした。私は少し安堵を覚えると、そ
ちらに目を向け――


「……」


 絶句しました。小石ほどの大きさしかないアスター君が、私の目
の前に浮かんでいたのです。

 暫くあうあうと口を上手く動かせませんでしたが、思ったことが
漸く声に出ました。


「あ……あの、これはどういうことなんですか!? それに、ここ
は何処なんですか!?」


 焦る私に反して、アスター君はにこにこと余裕があります。


「ここは昨日の晩と同じ場所だよ」


 アスター君は後の問いかけにだけ答えました。

「そんなはずありません! こんな光景はみたことが……」

「そうかな?」

「だって、昨日と全然違うじゃないですか」

「そんなことないよ。よーく見てごらん」


 そう言われたので、私はその場に屈み込んでみました。手元から
蔓を伸ばし、例の可笑しな草を退けます。因みに、“ロゼリア”と
いう種族の手に当たる部分には大きな花が咲いていて、その隙間か
ら伸ばす蔓が手の代わりをしているのです。

 じっくり観察してみると、例の草は余計に木の形をしていました。

 そして、新しい発見をしました。草をかき分けたその先に、小さ
な虫のような生き物を見つけたのです。それをよくよく見てみると
、虫ではありませんでした。


「うわあぁ!」

「怪物だ!」


 虫の鳴き声と聞き違えてしまいそうな悲鳴を上げ、一目散に逃げ
ていったのは、虫などではなくポケモンたちだったのです。


「え!? えぇ!?」


 私は忽ち混乱に陥りました。もはや何がどうなっているのか解り
ません。アスター君も他のポケモンたちも小さくなってしまって――。

 頭を抱えていると、ふっとあることに気付きました。今この場に
、私より大きな物がないのです。前に言ったように、私はポケモン
の中でも最も小さな部類に含まれるので、草むらに入れば体が隠れ
てしまう場合が殆どでした。それなのに、今私の周りには、足下程
度の高さの草しかありません。

 それに加えて、アスター君や他のポケモンたちの言葉にも引っか
かるところがあります。特に、私のことを「化け物だ」なんて、ま
るで自分たちが小さくなっていることを自覚していないかのよう
でした。


(もしかして……)


 私の中に、ある考えが浮かびました。流石にそれはないかと一旦
否定したものの、どうもそれ以外には説明がつきそうもありません
でした。


「あのぅ」


 ずっと傍らに居たアスター君に、話しかけてみます。


「もしかして、私、とても大きくなってたりしますか?」


 そうだとすると、足下の草は森の木々で、細い水の流れは川で、
こんもりと聳えたアレは……多分山でしょう。

 我ながら突拍子もない考えですが、これ以外に考えられません。


「ご名答!」


 アスター君の声は、やたらに明るいものでした。否定されるかと
顔を赤らめていた私は、面食らいます。


「で、でも、どうやって!?」

「それを説明するには、まず僕の正体を明かした方が良いだろうね」


 アスター君の口調は、先程とは打って変わって改まった様子でし
た。


「僕はジラーチっていう種族のポケモンなんだ」

「じらーち?」


 聞き慣れない種族名です。


「聞いたことないだろうね。僕らは滅多に人前に出てこないから」

「そう、なんですか」


 私は頷きつつも、そのことと今のこの状況がどう関係するのか分
からずにいました。


「その理由って言うのがね」


 アスター君は言いました。


「何でも実現してしまう能力があるからなんだ」


 耳を疑いました。何でも実現する、だなんて夢のようなことを聞
かされても、あまりピンと来ないのが本音です。とは言え、今の状
況を説明できるものは他にありませんが。


「じゃあ……」

「そう。僕が君のことを大きくしたんだ」

「でも、どうして」

「どうしてって、君は友達を奪った奴をあんなに憎んでたじゃない
か。自分の手で復讐したくない?」

「ふ、復讐だなんて……」


 確かに、とても憎いとは思いますが。やはり“復讐”というのは
どうなのでしょうか。復讐の相手に対して、また新しい憎しみを生
むだけで、何の解決にもならない気がします。


「でも、このままでいいの?」

「そ、それは……」


 もしアスター君が言うような“快楽のための捕食”をあの怪物が
未だに続けているのだとしたら、許し難いことです。
 それを食い止められずに、ひっそりと耐え忍んでこれからを過ご
していく自信は、私にはありません。

 それでも“復讐”の判断に躊躇っていると、アスター君はこう提
案しました。


「復讐が嫌だったら、注意してやればいいんじゃないかな。今の君
なら、その怪物だって歯が立たないだろうし、迫力あるもん。死ぬ
ほど恐い思いをさせてやれば、やめるかもしれないよ」

「あ……」


 そうか、そうですよね。何もこのような体になったからといって
、暴力に訴える必要などありませんでした。

 それに、捕食される心配なくあの怪物に向き合えるのですから、
これはまたとない機会なのではないでしょうか。


「それなら、やってみたいです」


 私はアスター君にそう言いました。

 

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