「そんなに恐がる事はないぞ?別に殺そうと言う訳ではないのだぞ?」
「ぅう・・で、でも・・・」
「安心しろ。特に痛い事をするつもりはないからな。」
「ほ、本当っ・・・・?」
「ああ、約束する。だから・・・いいな。」
ガパッと粘っこい音を立てて、クシャルダオラの大口が開かれた。唾液の糸を引き、ピンク色の舌が忙しく動く。
その奥に広がる喉と言う暗闇。
ゆっくりとそれが近づくにつれ、影が全身を覆う。
「ぅぅ・・・あ、あぁ・・」
今、約束を交わしたとは言え、流石に恐怖を覚える。
自然に体が震え、体が上手く動かない。
「んんっ!?ん〜〜!!」
突然、クシャルダオラが顔を横にしたかと思うと、その舌が口の中に差し込まれ、そのまま顎の後ろ骨まで口で塞がれた。
グチュッ・・ヌチュ・・ニチャッ・・
僕とクシャルダオラの唾液が混ざりあい、不快な音が頭にまで嫌に響く。
「んっん〜〜・・・う・・ぇっ・・」
舌は恐らく喉まで侵入しており、無理矢理その唾液を飲まされる。生暖かく、生臭い、不快感の固まりを。
ヌチャァ・・・ドロォ・・
押し返そうともクシャルダオラにかなうはずもなく、
さらに唾液を飲まされてしまう。
「んっ!んん〜〜〜!」
顎の後ろ骨と共に、口と鼻まで塞がれているので、呼吸がきつくなっている。
前脚に押さえつけられていない両足をばたつかせた。
と、牙にグッと力がこもる。
大人しくしていろ。と言う意味だろうか?
仕方なく足でばたつくのを止め、大人しくした。
すると、牙から力が抜けた。
ジュルルッ・・・ドロォッ・・ポタタッ・・
舌が口から抜かれ、離れた顎に戻っていった。
その間に唾液が糸を引き、その口元から滴る唾液と共に地面に垂れていった。
「ふぅ・・久々の感触だな。」
「うぇっ・・ごほっ・・げほっ・・」
僕は慌てて咳き込んだ。でも飲んでしまった唾液は吐き出せなかった。あの生暖かさがまだ残っているーーー
気持ち悪い。その一言だ。
「駄目だ・・・お前を見ているとどうも、食欲を抑えられないな。今すぐお前を喰らいたいぞ・・」
ペロリと舌が現れ僕をジッと見つめたままクシャルダオラが舌舐めずった。
「待ってっ・・・助けて?おねが・・・」
立ち上がろうとして言葉を失った。体がやけに痺れる。
「私の唾液を飲んだのか?」
「・・う・・・んっ・・・」
声も出しにくい。と、言うかあの状況で飲まないほうがおかしいと思う。
「主食である鉱物の中には人体に悪影響を引き起こすものがあったような気がするが・・・いいだろう?」
「いいわけない・・・」
ベロリ・・・・
「ぅひぃっ!!」
首筋にゆっくり舌を這わせ、体温と味を奪い取る。
「私に喰われて気を失うのだから構わないはずだ。」
「えっ・・・・・」
「それにしても・・・お前は良い味をしている。もう喰いたくてウズウズしているのだ。覚悟はいいな。」
グッと僕の目前にまで顔を近づけて重々しく言い放つ。
その表情には冷徹ではなく、確かな笑みが浮かんでいた。
ベロリッ・・
滑らかなピンクの舌が頬を撫でた。
生暖かい・・・いや、冷たい・・?
(・・感覚まで・・おかしくなって・・る?)
意識がぼやけ、いまいちハッキリしない。
だが、次の瞬間に現実に引き戻された。
右腕に鋭い痛みが走った。
「う・・うわぁ!」
よく見れば右腕の皮膚をクシャルダオラの牙が喰い破っていた。鮮血が流れ、腕と口を紅く染める。
ペロ・・ペロペロッ・・・
しかし、出血量は少しだ。どこかを少し切ったぐらいの。
クシャルダオラはその血を欲するかのように、腕を咥え、血を吸い出し、それを執拗に舐め取っていた。
「痛いよ・・・痛い事はしない・・って・・・言ったでしょ・・?」
「・・少しぐらいは我慢出来るだろう?」
「うぅ・・うう・・ひっく・・えぐっ・・・」
痛みと恐怖が複雑に入り交じり、僕は遂に泣き出してしまっていた。冷たい涙が頬を伝い、地に落ちる。
「・・・・分かった、分かった。私が悪かった。だから・・・な?泣くな。」
僕の冷たい涙をクシャルダオラの舌が舐め取る。
「うう・・ひっく・・っぐ・・」
「悪いが・・私の好奇心に付き合ってくれ。付き合ってくれたら、必ず帰す。今度こそ約束しよう。」
「ひっぐ・・ほ、本当っ?」
「ああ・・だから、もう少しだけ・・・な?耐えてくれ。」
「う・・ん。絶対・・だよ・・」
分かりにくかったが、その表情には確かに優しい笑みがあった。
アグッ・・・ムググッ・・・
クシャルダオラが左腕を甘噛みし始める。
「んっ・・・あぁ・・・あう・・」
牙が皮膚に食い込んで、時折、ちくりとした痛みが襲って自然と喘いでしまう。
その声に反応し、クシャルダオラが心配そうな目を向ける。
「大丈夫か・・・?」
「う・・うんっ・・・」
苦しげな声が漏れた。だが、甘噛みの加減は変わらない。
体のあちこち甘噛みされて・・数十分。
「・・・そろそろ、いいな?」
「はっ・・はふっ・・う、うん・・・」
互いの息は荒い。クシャルダオラはすでに興奮しており心配そうな目はもう向けてこなくなっていた。
ハクッ・・
口が僕の両足を咥え、宙に持ち上げられた。
クッ、クッと何度も咥え直しながら口内に僕を引き込んでいく。
そして、バクンという小気味のいい音を立てて、クシャルダオラの巨口が閉じられた。
口の中という暗闇に一人放り出された。

 

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