叩いても、爪を立てても柔軟に受け止める胃壁はアルの力では刺激にすらならない。
かといって、このまま溶かされる気もないアルは思考を続ける。幸いなことに、ライラさんは自分を直ぐに溶かす気は無いらしい。
しかし、それも時間の問題でしかない。とりあえず、出ることが重要だ。

「妖術使ったところで、ライラさんが吐き出してはくれないし……どうしよう」

モコモコと、柔らかな胃壁を押し返すしかできないアルは困り果てていた。
このまま暴れていても、酸欠になるだけである。


「ふぅ……アル……」

一方外では、洞窟の中で寝そべり惰眠を取ろうとするライラ。消化を遅らせた所でせいぜい、アルの小さな身体では一日もかからない。
もう、友達でいることをきっぱりと諦めようとしていたライラ。
中では、小さな抵抗が感じられるがそれくらいでは吐き気すらしない。

「はぁ……どうして見てしまったの……」

アルをお腹に収めてから何度となく溜め息。アルがあの場にいなければ、こんなことにならなかったのに、と思うが今ではどうしようもない。
ライラは静かに目を瞑り……ゆっくりと眠りについた……。


―――こっちに来ないでっ……!

(あれは……昔の私……)

数十年は前のうっすらと覚えているような記憶……。

―――いやっ…!放して……!

(あの頃は私も小さくて……アルのように龍族は珍しいからといって捕まえようと誰からも追われていたんだっけ……)

獣人に捕まった自分を見つめ、助けようと伸ばした手は、触ることもできず通り抜けてしまう……。

(あぁ、これは夢なのね……)

そう、追われる毎日が嫌になった自分は龍族であることを隠し……この川で身を潜める生活を始めた。
それからはひとりぼっち。……木の実を拾ったり、川魚を捕まえる時も一人だった。




寂しいと何度泣いたことだろう……。

龍族であることを何度嘆いただろう……。




ただ、楽しく話せる友達が欲しかった。

ただ、一緒に泳ぎたかった。


そんな小さな願いも、私が水龍と分かり本当の姿を見せれば逃げ惑うか、襲いかかってくるだけ……笑顔なんて見た事が無かった。

しかし、初めての友達……。


そのままライラは目を覚ました。洞窟の外に出ると、既に満点の星が散りばめられた空。
淡く満月が輝いて、光がライラの細かい鱗に反射して七色に輝いていた……。
そのまま、ライラは静まり返った川に顔を洗いに行く。

「あれ……私…泣いて…いたの……?」

水面に映る自分の顔からは涙が垂れていた。

「…………アル」

小さく呟き、自分のお腹を擦る。膨らみはまだあるものの、もう暴れる抵抗もない。もしかしたら消化してしまったかもしれない……。

「……ライラ……さん」

消え入りそうな程の小さな声。もしかしたら、幻聴かもしれない。しかし、ライラは無意識の内に吐き出そうとしていた……!

「アル……お願い……生きていて……んぐ…」

小さなアルを吐き出すのは容易では無い。しかし、苦しそうに嗚咽しながらも、徐々に膨らみが上がっていき……。

「んぅ……グパァ……!」
ベチャッと、体液まみれのアルが吐き出され、ライラは直ぐに手で抱き上げる。

「大丈夫……息はしてる」

「ライラ……さん」

ライラはそっとアルの胸に耳を当て、心音を確認する。すると、アルは囁くようにライラの名を呼んだ。

 

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