《オマケ》


シャ「まったく、貴方という人は台本すら守れないのですか? いや、それより台本をしっかりと読みましたか?」

ティ「えっ? ちゃんと読んだわよ?」

シャ「ほう……ティナ。 それなら何故崖を飛び降りたのですか?」

ティ「もしかして、シャンクそれで怒ってるの?
   でもでも、台本には薬草を採りに崖から降りるって、此処に書いているでしょ?」

シャ「ふぅぅ……もう少し下まで読んでください。
   括弧の中にロープを使ってゆっくりと降りる……そう書かれているはずです。
   それなのに貴方と来たら、まさか飛び降りるとは呆れますね」

ティ「失礼ね、ちゃんと下まで読んだわよ。単にロープで下りるのが面倒だなって」

シャ「私には面倒だからと言って、数百メートルもある渓谷を飛び降りるその神経が信じられませんねぇ」

ティ「中々気持ちいいと思うけど……? こう、風が全身をバサバサって擽って♪
   あっ! でも、シャンクは真似したらダメね♪」

シャ「嫌みのつもりですか? 生憎と私はそんな無謀なことはしませんよ。
   それはともかく……ティナに言いたいことがもう一つあります」

ティ「な、なにかしら?」

シャ「クククッ……腰が引けてますよ? おや、どうして後ずさるのでしょうね?」

ティ「う〜ん、何か嫌な予感がして……;」

シャ「おやおや、いけない人だ、私がコレだけ優しく笑って話し掛けているのに」

ティ「そ、それで笑っているつもり?」

シャ「そうですが? イヤ、そんなことどうでも良いのです」


暫く二人の追い駆けっこが続く。
ティナは壁際に追いつめられ、シャンクは彼女の目の前でチュルッと舌を出した。


ティ「シャンク、お願い止めて! ねっ! ねっ! 今度はちゃんと台本道理にするから!!」

シャ「おや? 私はまだどうするか何も言っていませんよ?
   ……まぁ、恐らく貴方が思っているとおりのことをするつもりですがねぇ……ウククッ♪」

ティ「うぅ、やっぱり私を食べるつもりなのね」

シャ「勿論ですよ。本来なら薬草を採って返ってきた貴方を労いつつ、
   ゆっくりと味見をして、頂く。 と言う台本の筋書きを大幅に変更するハメになったのですから
   台本を書かれたFさんから許可も頂けましたし、諦めて私の味見に付き合って貰います」

ティ「味見って……シャンク、コレまで何度も私を味見してるじゃないの……」

シャ「その通りですが、美味しい者を何度も食べたいと思うのは人として当然のことかと。
   ましてや、ティナは希少種の金狼、初めて口にしたときのあの味、私はまだ忘れていません」

ティ「……あの時は、私も貴重な体験をさせて貰ったわよ」

シャ「クククッ……さて、そろそろ覚悟はお出来になりましたか?」

ティ「うみゅぅ……出来てないって言っても食べる気満々なくせして……
   せ、せめて、服だけでも脱がさせて!」

シャ「ええ、構いません。貴方がその服を大事にしているのは知っていますし。
   貴方の機嫌を無理に損ねたら、今後の味見に支障を来しかねますので…………」

ティ「前半はありがたいけど……後半は……;
   はぁ、最近の私って、何でこういう目に合うのかしら?」

シャ「恐らく私達の創造者の設定のせいでしょう。それと、その周囲の仲間達のせいでもあるでしょうが……
   ティナ……そろそろ準備は良いですか?」

ティ「もう少し待って……よっと。 よし、準備出来たわよ……不本意ながらだけどね♪」

シャ「……そう言う割には潔いことで。 では遠慮無く……」


シャンクの手がティナの両肩に添えられ、太い尻尾が彼女の太股辺りを体重を支えるように巻き付く。
こうしてみると二人の体格差はかなりの差があるのが見て取れる。
もしかしたら、シャンクが度々ティナを味見したがるのは、彼女程度の体格が手頃なせいなのかも知れない。

そんな彼女も、今や呑まれ慣れたかのように頬を濡らす涎を滴らせた口の傍へ、頭を差し出していた。


直ぐに丸呑みにするか、じっくりと舌を這わせて丸呑みにするか。
シャンクは一体どれを選択するのだろう?


ヘビのように大きく開かれた口から涎を滴らせ、迷うように差し出された頭の上で上下している。



……バタンッ



そんな二人に遠慮するかのように扉が閉じられた。
部屋の外からでは、中の様子を目では窺い知ることは出来ないが、響いてくる音によって容易に想像が付く。
むしろ音だけの方がより妄想をかき立ててくれるだろう。

此処からは、その音と二人の声だけを書き記す。


……ヌチュ……

ピチャ…クチュリ…クチュリ………


「うぅ……んっ! あ……はぁ……」
「ほらほら動かないでください。
 ですが……ジュル……こうして舐めているだけで食欲をそそられますねぇ…クククッ」
「ちょ、ちょっとシャンク……! ……何処を舐めてぇ……ひゃっ!」


ドタッ! ビチャリッ……


「つぅっ! ……いったぁ」
「あんまり動くモノですから転けてしまいましたねぇ……
 ああ、ワザとではありませんよ、貴方の肌に傷を付けては味が半減してしまいますから」
「うぅ……重い、それにヌルヌルして身体が……」


ズルル……ズボッ!


「はぁ……はぁ、ようやく出られた。
 食べるなら、こんなに時間かけないでさっさとお願い……」
「おや、もうお疲れですかねぇ?
 分かりました食材の前でいつまでも舌なめずりをするのもマナー違反でしょうし……」
「あっ……くぅ!」
「では、頂かせて貰いましょう……ウククッ」


グバァッ! ポタ……ポタ……ポタ


「うっ! 凄い涎……ね」
「その体で今更気にすることもないでしょう? 頂きます……!」


ガブゥ! グボッ……ジュルル!


「やぅぅ……もっと、優しくしてよ」
「おや、十分優しく呑んでいるではないですか?」
「そうじゃっ! んぅっ」


ゴクリッ!


「ふぅ〜最後は何を言っているのか分かりませんでしたねぇ……ウククッ
 相変わらず、中々の味でしたよ……ご馳走様です」


そして、シャンクは一礼を……
同時に蠢くお腹に目がいきいかにも楽しげで悦の入った笑みが溢れていた。


「では、彼女はこの通り返事が出来ませんので、私がオマケを締めくくらせて貰いましょう。
 ……おつされ様でした、クククッ……中々楽しませて貰いましたよ」



おまけ The End

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