気付いたらそこは出口の無い、壁に囲まれた空間。
上を見上げれば月が出ていて、仄かな月光が自分の姿を照らす。
腰に下げているモンスターボールは無くなっており、その代わり壊れたモンスターボールが一つ転がっている。

そして、目の前には息を荒くしたボスゴドラがこちらを見ている。

「アレイ・・・?」

アレイとは自分が昔、コドラを捕まえた時に付けたニックネーム。 今はボスゴドラになって、冒険を始めた頃からパートナーとして戦ってきた仲間だ。
まあ見た目とタイプ、それに特徴を見て鉄アレイと似ていたということでアレイになったのだが・・・。
今はそんなことを考えている余裕はなさそうだ。 名を呼ぶと嬉しそうに鳴いた。
そこまでは良かった。
それで少し安心してしまい、気を抜いた瞬間。
前面にはひんやりとした岩の感触、背に回された手の感触。
頭を舐められている感触。


とどのつまり、突然抱きしめられたってことだ。
人間の筋力程度で戒めから抜け出そうとすることなど、出来はしないだろう。
本人に離す気が無いのなら、だが。

「ア、アレイ!?」

慌てずに居られるのがおかしい、慌てないヤツは余程のポケモン好きかこの行為自体日常茶飯事になっているかのどちらかだ。
っとまあ、俺はこの時点で何かがおかしいと思い始めた。 アレイは自分からこんな事をするより、俺が優しく頭を撫でてやったほうが喜ぶヤツだからだ。
って言ってるヒマはない。いや、俺が勝手に言ってるだけなんだけど。

それになんか背中が痛い。 抱きしめてる力が強くなっているようで、何だか嫌な予感がする。

「や、やめr・・・んぐぅっ!?」

口を塞がれる。 いや、顔全体がヌルヌルしつつも少し柔らかい口の中へと収まってしまったのだ。
結果的に舌に顔を押し付けられる状態になって、口が塞がっているだけだ。
何より辛いのが息が満足に出来ないこと。更にマズイのは意識が飛びかかってるということ。

まあこんだけショック受けたらそうだろうなぁと思っている内に、めのまえがまっくらになった。


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