震えた声で必死に強がり、視界の先にある暗闇に必死に叫んでいると 
ずずっ…ずずっ…
何かが這いずりながら近付いてくる音が段々と大きくなり、ザングースの目の前にその姿をゆっくりと現した。 

「こんな所に何の用があるのかぁ…?」
不気味な笑みを浮かべながら現れたのは、通常より数倍大きいサイズのハブネークである。 
『う…』
その姿を見た瞬間、彼の心の中にとある気持ちが現れ始めた。
《コイツと…戦いたい!》 
そんな思いが現れ始め、此方を見ているハブネークに
『俺と戦え!』

先程までの恐怖心は何処に行ったのかと言わせる位、威勢の良い声で言い放つ。 
「戦え…?お前、今の状況が分かって言ってるのか…?」

ギュゥゥッ! 

『ウガァァッ!』
ザングースを捕らえていた「何か」の締め付けが突然強くなり、苦痛の叫び声を上げる。 
彼は今気が付いた。自分を捕らえていたのは、このハブネークの長い胴体だったという事を。
「そんな脆い体でこの俺に挑もうなんてなぁ…」
叫んだザングースを見てニヤリとしながらその体を見続けて…

「しかしお前…見れば見るほど美味そうな体してるなぁ…。」
小さく呟いた後に舌なめずりをして、顔を近付けて… 
『ぐ…うっ…(こいつ…今何て言いやがった…)』 
強く締め付けられて満足に呼吸も出来ず、呻き声を出し続けているザングース。
突然顔を近付けられて、その口から漂ってくる生暖かい息を否応無しにかがされ、気分が悪くなるのと同時に段々とこのハブネークが先程何を言っていたか分かってきた気がした。

「そうだな・・・お前は美味そうな体をしているし・・・久々の食事だなぁ・・・。」

ベロォッ・・・

ハブネークが顔を唾液の付着した舌で顔を舐める。
『うぷっ・・・き、気持ち悪い・・・』
舐められても締め付けられているので何も出来ず、言葉だけが虚しく響く。
その後も執拗に全身を舐め続けられ、その度に口から勝手に喘ぎ声が漏れる。

「ん〜?さっきの威勢の良さはどこに行っちまったんだぁ・・・?」
舐めるのを止めて唾液まみれになったザングースを見てニヤニヤしながら、大きく口を開いて近付けていく。
その口の大きさはザングースを丸呑みに出来そうな大きさで・・・それを見たザングースは自分に迫っている危機を直感的に感じて

『う・・・うわぁぁああ!やめろ!離しやがれぇ!』
渾身の力を込めて巻きつきから逃れようとするが、ビクともしないどころか・・・逆に自分の体力だけを消耗しているだけなのに気付かず、そのまま口が迫り・・・

ハグッ!

生暖かい・・・そして、湿っぽい真っ暗な空間…。
周囲には、何かぐにぐにと動く…そう、壁のようなもの。
しかし、足や手などから伝わってくる冷たい森の空気とは…全く異なるものが自分の顔を包んでいる。

『う…きもちわりぃ…何だ…コレ…』
と、顔を動かしてみると顎に何か柔らかい物が当たる。
その柔らかい何かが、自分の顔を這って行き…水のような、それでいて粘っこいものがどんどん自分の顔についていくのが分かり…不思議そうにしていると

「ん〜…まあまあの味だなぁ。」
と、あのハブネークの声がどこからかエコーして聞こえる。

その間にも自分の体がその異なる感触に包まれていき、不思議に思ったザングースは体を動かしてみるが、強い力で拘束されており動くことが出来ない。
『くっ…まさか…』
ザングースは先程、あのハブネークの口が迫り…突然視界が暗くなったことを思い出す。
その直後に今も感じている感触が…ずっと続いているのだ。

ザングースは確信した。

−自分は…あのハブネークに食べられている。−

と。
今、自分の体を這っている物はハブネークの舌で…あの粘っこい水滴は唾液で…。
周りの壁…それは、口の中の肉壁で…。

そう、ザングースの頭の中で変換された時…恐怖心が…彼の中で爆発し…
『や…やめろぉぉっ!出しやがれぇ!この化け物ぉ!』
狭く閉ざされた空間の中でその体を無理矢理捻ったり、出来る限りの抵抗をしてみせるが…

「活きの良い獲物だな…だが、もう諦め時だろう…。」
その言葉が響いた直後に突然自分の体を持ち上げられる感覚が体を襲い、口の中を落ちていく速度突然速くなる。
ザングースを包む舌や肉壁が忙しなく動く。
彼の体を速く体内に入れてしまおうと…

『くそっ…喰われて…たまる…か…』
出来る限りの抵抗はしている。 しかし、それでもゆっくりと確実に呑まれていく。
「これで…仕舞いだ…。」

ハブネークは完全にザングースの体を口内に収め…そして、

ゴクッ。


そんな音と共にザングースを完全に呑み込み、体内に送り込む。
ハブネークの体をゆっくりと下っていく不自然な膨らみ。
時折、その膨らみから手足の様な出っ張りが出来たりもするが…ハブネークは其れを見て

「久々の獲物だったが…こんなに活きがいいのは本当に珍しいなぁ…」
そう言いながら、そのまま暗闇の中に消えていった。


それから…数日後。
また…何も知らない一匹のポケモンが…警告も聞かず、森の中に入っていった。

この後の運命も知らずに…。


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