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見上げれば確かにそこに空がある − 旧・小説投稿所A

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見上げれば確かにそこに空がある

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翌年、サーナイトは男の子のヒトカゲを産んだ。
二匹共に、見た目は一見普通のラルトスとヒトカゲである。

それが普通ではないと気がついたのは、ラルトスが産まれて二年が経った時だった。

「まま、みて!」

少し言葉を覚えてきたラルトスがふらふらとサーナイトに近づく。

「ん? なに、ラルトス」
夕飯の支度をしていた手を止め、サーナイトは屈んでラルトスに微笑んだ。
そんな母親の顔を見て、ラルトスは顔をほころばせる。
そして次の瞬間、ラルトスが口を開いたかと思うとその口からなんと火花が飛び出したのだ。

危うく火傷をするところだったサーナイトは、自身の技、『サイコキネシス』でなんとか事なきを得る。

「ラルトス! 火が吐けるの?」

「ひ? ひぃ!」

『火』という言葉を知らないラルトス。
新しい言葉に喜びを感じたらしく、それからしばらく、続けざまに火を吐いていた。

一方ヒトカゲも同じく普通と異なり、『念力』など、エスパータイプの技が使えるようだった。

親としては、子どもが自分達の性質を受け継いだと実感できる、とてもうれしい出来事だっただろう。
しかし世の中でこの事は知られるべきではないのかもしれない。

なにせ、この子達の父親はこの辺りでは恐れられているのだから。
その子どもとなれば、周囲の視線は至極残酷なものに変わってしまうだろう。

子ども達を寝かしつけたとき、その事についてリザードンに相談した。

「確かに我輩は皆に好かれる存在ではないからな。お前の言う通りなのかもしれん」

ちゃぶ台のような低い机に並べられた料理。その一つである肉の切り身を口に運びながら、リザードンは言った。

「じゃあやっぱり、この事は家族だけの秘密にした方がいいわね」

「……うむ、そうだな」

咀嚼していた物をごくりと嚥下してから、リザードンは頷く。
尻尾の炎は、暗い洞穴を暖かく照らしていたのだった。






ラルトスとヒトカゲが産まれてから早くも四年が経った。

輝やかしく、幸せな毎日。ずっとこの生活が続くと思っていた。
ある者が来るまでは。

「さ、サーナイト!」

突然だった。出掛けていたリザードンが洞穴に戻って来たのは。

今まで見たこともないほどに息を切らし、苦渋の表情を浮かべてリザードンは妻の名を叫んだ。

「な、なに? リザ――」

「話は後だ! 急いでここを離れるぞ!」

その様子から、とても尋常でないことが起こっているということを理解するのは火を見るより確かだった。
彼の気持ちを察し、言われるがままに準備をするサーナイト。
子ども達には何がどうなのか分かっていない様子だった。

「もう、ここには戻って来れないかもな……」

額に汗を浮かべて、ぼそりと呟くリザードンの声がはっきりと聞こえた。

ひとしきり準備が整うと、リザードンはサーナイト達に背中に乗るようにと告げた。

大丈夫なのかと少し不安になったが、時間はあまりないようである。
後方から大勢の人影が迫ってくるのが見えた。
その中に、見覚えのある影が一つ。

「お、お父さん!?」

間違いない。そう確信した。
自分の親を見違えるわけがないからだ。

「サーナイト!」

リザードンの声にハッとして急いで彼の背中によじ登る。

「しっかり捕まれよ」

次の瞬間。体が置いていかれ、魂だけが抜けたのかと錯覚した。
ギュッと彼の首元を掴む力が強まる。

そんな一方でラルトスは無邪気に騒いでいたが、ヒトカゲはおとなしかった。

みるみるうちに地面が遠くなる。
同時に人影も見えないほど小さな点になっていく。

「おい、大丈夫か?」

「ふぇ?」

慣れない空の中。ここから落ちたら間違いなく死ぬ。
恐怖でおかしくなっても不思議ではない。
それが返事が変になっただけであまりそうならないのは、彼の体温が直に伝わるからなのかもしれなかった。

しかしそうは言ってもやはり下を見る勇気はない。
正直、早く降ろして欲しいのが本音だった。

サーナイトの耳には、次々と過ぎ去る風の音が騒がしく聞こえていた。


久しぶりの更新。
待っててくれた方々に感謝と謝罪を……m(_ _;)m
知らぬ間に閲覧数が千を越えてました!o(`▽´)o
皆さんほんとにありがとおおおおお♪

どうしても捕食が薄くなる私はあまりこの場所が向いてないかもですが、残りを最後まで頑張ります。
お付き合い頂けると大変嬉しいでございまする←日本語おかしい。

ではでは、今日はこの辺で……(≧∇≦)ノシ
<2012/07/26 21:18 ミカ>
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