そして、もう一方のエーフィーは…… 今だ戦いを続けているルギアとカイリューから、 少し離れた場所にテレポートすることに成功していた。 「はあ、はあ……危なかった……もう少しで、潰されるところだったわ……っ!」 ひとまず助かったことで、エーフィーは安堵すると共に 体が疲労を思い出したかのように少し脱力感を感じていた。 連続の超能力の使用で体力と精神の消耗でエーフィーは…… 今にも倒れそうにフラフラとふらつきながら後ずさったが、あることを思い出し顔をあげる。 「そう言えばグラエナさんはどうなったの! もしかして、まだあそこに!」 あの時、自分の側にいたグラエナを置いて、 一匹でテレポートしてしまった事にエーフィーは、青ざめて後悔した。 「……大丈夫……きっと無事なはず。 お願い……本当に無事でいて、グラエナさん……」 自分にそう言い聞かせ、ルギアとカイリューの方へ目を向けて、 いや……そこより少し離れた場所に目を向けて、それを見つけた瞬間…… 「グ、グラエナさん! そんな……どうして、あなたが……」 エーフィーは自分の予想が外れていたことを思い知らされた。 ボーマンダに襲われているグラエナの姿に…… 目を……意識を……釘付けにされて、まったく動くことの無くなったエーフィー。 そして、エーフィーの時間が止まっている間…… 長く続いていたルギアとカイリューのこの2匹の戦いも、 そろそろ終わりを迎えようとしていた。 押し倒され圧倒的に不利の中でカイリューは、 ルギアの口の中に頭を覆われていたが、律儀にもルギアはそのまま咥えようとはせず。 今でもカイリューに向けて、柔らかな舌を伸ばして舐めようとするためだけにとどめていた。 その舌をカイリューは辛うじて掴み取り、必死に抵抗を続けていた 唾液で滑るルギアの舌を長く掴むのは消耗が激しくて、 カイリューの手にしだいに疲れがあらわれ始めて、掴んでいる手がプルプルと震えだしてきた。 「が、うぐ……ルギア……もういい加減に諦めろ! はぁ……はぁ……一体、何故そんなに俺を食いたいんだ!」 明らかに疲れたような声…… カイリューはそれでも何とか声を出しながらルギアに問いかけた。 その間にも抵抗するカイリューの手から、ルギアの舌がズルズルと抜け出そうとしている…… 「そんなもの、……理由はない、何となくだ。 ……しいて言えば、お前が一番近くにいたからだ!」 「がぁ! 何だと……そ、そんな理由で……」 ルギアに余りにも適当な理由を突きつけられ、 怒り以外のなにかがカイリューの体から抜けるような感覚が襲いかかり、 一気に脱力する感覚を味わうカイリュー。 そんなカイリューに最後のチャンスだと言わんばかりに、 時間のないルギアは、一気に舌に力を込めていき…… ズボッ!と音を立ててカイリューの手から舌を引き抜いた。 そして、時間がないこともあり、ルギアは律儀になることを止める。 ルギアはもう一度、大きく口を開くと、今度は容赦なく逃げられないように、 カイリューの腰回りまで、深く自分の口の中に咥え込み……執拗に嘗め回した。 ペロペロ……ピチャ…ネチャ……クチャッ…… 「うぁっ! あう…や、止めろ! うっぷ…ぐっ…べぇ……」 何とも言えない感覚がカイリューに襲いかかり、 ルギアの舌に上半身を嘗め回される度に…… カイリューの口から苦しそうに喘ぐ声がもれ……それと同時にビクビクと体が震える。 ルギアは舌の上で満足行くまでカイリューの味見を楽しみ…… 不意にカイリューを口の中から解放した。 「ふふふ……美味しかったぞ、カイリュー。 今日は時間がないからここまでだが……次は最後まで食べさせてくれ。」 カイリューの美味しさに、ルギアの口から笑い声がもれている。 味見をさせてもらったカイリューに、賛辞の声を伝えその場から飛び立とうと翼を広げて、 「それではカイリュー、私はもう帰らせてもらうぞ。」 そう言い残し、ルギアは空へ舞い上がった。 その姿をカイリューは、地面に仰向けに倒れたまま見ていて…… 「誰が美味しかっただ! 止めろと言っただろうが! この、こいつを喰らえ!」 溜まりに溜まっていた、怒りを爆発させた。 跳ね起きると、空を飛んでいくルギアに向けて口を開いて、 シウゥゥゥゥゥと言う音と共に凄まじいエネルギーが収束していく。 限界まで収束させた瞬間、カイリューの破壊光線がルギアに向かって放たれた! ズッガーン!!! ルギアの胴体に命中した破壊光線が、その巨体をくの字に変えてはじき飛ばす。 ……次の瞬間に大爆発を起こした! モウモウと広がる爆風の中…… ルギアは、それを突き破り爆風の外に飛び出してきた。 「うぐ……カイリュー……やってくれたな!」 あのルギアが苦しそうに呻き、空を飛ぶ軌道もフラフラとして不安定になっている。 自分に破壊光線を放っってきた、カイリューを睨みつけながらも…… 怒りをぶつけるのは後回しにして、ルギアは一度……目を閉じた。 (……自己再生……) 心の中でルギアがそう呟くと、体がエーフィーの時と同じように、 いや、あの時よりさらに力強く青く光り輝いた。 文字通りあっという間に傷がふさがっていき…… 十数秒後には、ルギアの体は完全に回復していた。 そこで、改めて目を開きカイリューを睨みつけるルギア。 今すぐ襲いかかりたい衝動を抑えつけながらカイリューに宣告する。 「私の用事が済んだら……すぐにだ! すぐに……お前を食べに帰って来るから……待っていろ!」 それだけを言うとルギアは、再び羽ばたき何処かへと飛んでいった。 それを今度は大人しく見送るカイリュー…… 最後に見たルギアの形相に、カイリューは少し背筋が震えるのを感じていた。 「ふんっ! お前が帰ってくる頃までには、全て終わらせてやる!」 ……それを振り払うように強気に声を出した。 それから、改めて気を取り直し…… 「…… ふぅ、邪魔なルギアがいなくなった。 色々とありすぎて、まずは落ち着こうとカイリューは深呼吸をした。 そして、さっさと食べる物を食べて、ここから立ち去ろうと、 狙っていたグラエナとエーフィー、ミミロルを探しながら、 周囲を見渡しながら歩くと、ボーマンダに襲われているグラエナの姿が目に飛び込んできた。。 「ああ! 俺が食べようと思っていた餌が……って、いつのまにボーマンダが!?」 ルギアとの戦いで周りの状況が、 さっぱりつかめないカイリューは……ふと気がついた。 「あれ?もう2匹はどこいった?」 グラエナの周囲を見渡してもエーフィー、ミミロルの姿が見えない。 もしかして、もう逃げてしまったのかという焦燥感が、 カイリューの心に芽生え始めた時……足下から突然声が聞こえてきた。 「……お気づきでない? カイリューさん。」 カイリューが声のする足下を見下ろすと、 エーフィーが呆然とした様子で立ちつくしていて…… ボーマンダに襲われているグラエナの方を見ながら話していた。 いや、ただ反射的に…… カイリューの独り言に反応しただけなのかも知れない。 それが切っ掛けとなり……あの時の光景。 エーフィー自身が見ていたミミロルが、 どうなっていったのかを再び思い出して、自然と言葉がもれた。 「先ほどミミロルさんが皮をぬいで、中から……あれが……」 「っ……!! あいつあんなちいせぇ中に?!」 その言葉にカイリューは目を見開いて、ボーマンダの姿を見ながら驚きで叫ぶ。 余りにも不自然な事なのだが…… 間違いなく、それをエーフィーは自身の目で見とどけたことだった。 目を見開いたまましばらく、ボーマンダの姿を見ていたカイリューだったが、 あることに、やっと気が付いて、エーフィーを見下ろした。 「ん?! ぉ、いた! 俺だけなしかとおもっだぜ!! まぁ、俺は一匹だけでも食えれば、ボーマンダの事なんかはどうでもいい。」 実は少し残念だったりするのだが、今はさっさと何かを食べたいと思って…… カイリューの大きな手が、ボーゼンと座り込んでいるエーフィの元へと伸びていく。 その大きな手がエーフィーを、つかみ取ろうとしたその瞬間だった。 ……本能が危機を察知したのか? エーフィーが無意識のうちにカイリューを見上げ……正気に戻った! 「はっ…… サイコキネシスっ!」 カイリューの指先が触れるかどうかの瀬戸際で、カイリューの動きが止まった。 「なに……クッ!! ……超能力か!?」 超能力を使っているエーフィの体と、同じように青い光を放っているカイリュー…… いや、カイリュー自身が光っているわけではない、 エーフィーの超能力の影響を受けて……体を拘束され、青く光っていたのだった。 エーフィーに向けて手を伸ばしたまま…… まったく動くことも出来ず、悔しそうに呻きながら硬直しているカイリューを、 冷ややかな目で見つめているエーフィー…… 「貴方。 ……一体何を……するつもりだったの?」 その口からもれる言葉も、とても冷ややかっだった。 絶対グラエナには見せることのない、エーフィーの本当の怒り形相…… 「う……うぐ。 くそ……からだが動けば……」 空しくカイリューの口から呻き声だけが聞こえる。 自分より圧倒的に小さい生き物に、カイリューは完全に気圧されていた。 そのカイリューに向けて、 一体何をしようというのか、ゆっくりと手を挙げていくエーフィー…… その過程の中……エーフィーの目に再びグラエナの姿が映った。 ボーマンダに咥え込まれて、だんだんと弱らされていくグラエナの姿が…… 「むこうでグラエナさんがっ! ……ああ……何とかしないとグラエナさんが……一体どうしたら!」 見た者が驚きそうな変わりようで、 慌てふためくエーフィーは、何とかグラエナ助けようとしても、 すぐには何も思いつかなくて……その間にも、時間は容赦なく過ぎていく。 あれからボーマンダはグラエナの上半身を口の中に咥え込んだまま、 自分の欲望のままにグラエナを弄んでいた。 自分の口の中で呻き、グラエナが喘ぐ声をあげる度に…… ボーマンダは楽しそうに笑みを浮かべる。 「へへ、カワイイ声で鳴くじゃねーか。 それじゃあ、今度は舐めて……ゆっくり味をみてやるぜ……」 ベローリ…… ボーマンダの口の中から、唾液と共に赤い舌がグニューと伸びてきて、 器用にも咥え込んだまま、グラエナの腹部から、頭にかけてゆっくりと這い回した。 腹部を走る凄まじい悪寒に…… 「キャウンッ!」 グラエナは思わず大きな悲鳴をあげる。 ボーマンダの赤い舌が、口の中に帰って行く頃には、 グラエナの腹部に粘着性のある唾液がべったりと残されていた。 「……く…そ…!調子に……!!」 なんとか絞り出すように声を出すが、 その言葉は、ボーマンダの歯牙にも止めてもらえず…… 抵抗するグラエナが身をよじる度に、ポタポタと体を伝って唾液が滴り落ちていった。 「へへ、猫の方は逃しちまったが…… こっちも、なかなかウメーじゃねぇか、褒めてやるぜ!」 グラエナを口に咥え込んだまま…… ボーマンダは恍惚の表情を浮かべて、グラエナを褒め称えた。 その意外なおいしさにボーマンダは、 このまますぐにグラエナを飲み込んでしまうのが、もったいなく思い始めていた。 しばらく思案して……唐突に、 「……ぺっ!」 「なっ!? ギャウン!!」 ボーマンダに吐き出され、そのまま受け身もとれずにグラエナは地面に叩きつけられた。 一瞬驚きの声をだし……次の瞬間地面に叩きつけられた衝撃と痛みに、 グラエナは今日、何度目かの悲鳴をあげた。 さらに倒れているグラエナに容赦なくボーマンダの大きな足が踏み下ろされた。 ズシッ!とグラエナの腹部を踏みつけると…… 逃げ出さないように力を込めて、ガッシリと押さえ込んでいく。 「ぐあっ!? う、くっ……く……あぁぁ……」 地面に押し付けられ、グラエナの口から最初に大きな悲鳴が飛び出した。 その後、掠れるような声と共に、肺から徐々に空気が押し出されていく。 グラエナを押さえ込んだまま、 その様子をボーマンダは顔を近づけて、楽しそうに眺めている。 「このまま一瞬で呑んじまうのも、すげぇもったいねぇな。 もう一度……味見させてもらうぜ。」 その言葉の通りにグラエナに顔を近づけていく…… ボーマンダの口を開いていき、あふれ出た唾液がポタポタと滴り落ちる。 ……そして、 ベロォ……ペロペロ……チュルル……ピチャ…… 生々しい音を立て始めたボーマンダの舌が、 再びグラエナを……今度は全身を嘗め回し始めた。 「う…!…キュウウウウウン…!」 今まで以上に悪寒が走りグラエナに襲いかかる。 喘ぐ声をあげ……グラエナは荒く息をし出した……体は、着実に弱らされていく。 ベロー……ベロォ…… 喘ぐグラエナを見ても…… ボーマンダの舌の嘗め回す動きが、止まることは無かった。 グラエナを味見するついでにどんどん弱らせていく。 「あ…ああ!キャウンッ! う…キュウウンッ!」 だんだんと意識すら朦朧としてきたグラエナに、 幻聴か……『グラエナさん!』と言う聞き覚えのある声が聞こえだした。 「……エーフィ……?…逃げ…ろ」 朦朧とした意識の中、グラエナはそれが幻聴ではなくて、 本当にエーフィーが叫んでいる声だと思いこんだ。 ゆっくりと顔を動かし、聞こえてきた方に叫び返そうとしたが…… 口からもれたのは……掠れた声で、 離れたところにいるエーフィーに届くはずもなかった……が、変わりに…… 一番、聞かれたくない相手に聞こえてしまった。 「へへ、まだしゃべれるか? それじゃ喋れるうちに呑んじまうかなっ!」 「ぜぇ…ぜぇ…!」 存分にグラエナの味見を堪能したボーマンダ。 さすがに……これ以上味見を続けるつもりはないらしく。 息も絶え絶えで、抵抗しようにも抵抗する力がなくなったグラエナに 大きな口を開いて、ゆっくりと迫っていった。 それを青ざめた表情でエーフィーは見つめていて、 「グラエナさんっ!? グラエナさんっ!?」 何度もグラエナの言葉を叫び続けながら、 今もどうしようかと焦って、無意味に周りをキョロキョロと見渡し何かを探し続ける。 ふと、その動きが止まり……硬直したままのカイリューを見上げた。 「カイリューさん、グラエナさん助けに……いきなさいっ!」 「ちょっ、ちょっと待て! 一体どうする……うわぁ?!」 エーフィーがカイリューに焦りながら早口で話しかけ、 手を高く上げると、その動きと同時にカイリューの体が高々と浮き上がり始めた。 一瞬、困惑するカイリューだったが、 何となくエーフィーが今からやるであろう事予想してしまい、 青ざめながら……エーフィーを止めようとするが…… 「いっっけぇえええ!!!」 ブンッ! 容赦なく手を振り下ろし、 ボーマンダに向けてカイリューを投げ飛ばした! 「本気か、お前ぇええ!!!」 凄まじい絶叫をあげつつ錐もみに回転しながら うなりを上げてカイリューは高速で飛んでいった。 自分に向かって凄まじい者が飛んできているとは、さすがにボーマンダも、 予想できるわけもなく……気づかないままグラエナを食べることを楽しんでいた ボーマンダはグラエナを食べようと、 大きく口を開いて、グラエナの上半身を咥え込んだ。 バクンッと音をたてて閉じられるボーマンダの口の中で…… 「キャイインッ!!」 再びグラエナの悲鳴が響き渡った。 そのまま、ボーマンダはアグアグと口を動かす度に…… 鋭い牙が、グラエナの体に傷をつけない程度の力で食い込んできて、 『キュウンッ!キャウンッ!』と 何度も襲いかかる痛みで悲鳴をあげているグラエナを、 ……ゆっくりと口の中へと引き込んでいった。 「へへ。 生きたまま丸呑みされる気分、あとで教えてくれよっ……ん!?」 口の中からグラエナの尻尾だけを、はみ出させていたボーマンダの耳に 何か……へんな叫び声が聞こえてきて、そちらの方へと顔を向けると…… 「うわぁ?!のわああぁぁぁぁ?!」 「ぐわああああ!!! ななな なんだ!?」 ものすごい表情と叫び声で自分に向かって飛んできているカイリューに ボーマンダもさすがに驚きで叫び声をあげて混乱する。 そして、何が何だか分からない内に…… ドスッ!! ドシャァアアア!!! エーフィー必殺のカイリューミサイルが、ボーマンダの顔面に命中した。 凄まじい衝撃にボーマンダの表情が歪んでいき…… 「ボハッ!! うぐっ……ぐぼぇ……」 さすがにグラエナを咥え続けていられるわけはなく……思わず吐き出してしまった。 「がっ!!」 力なくボーマンダの口の中から滑り落ちたグラエナ…… 受け身を取ることもできずに、ベシャッ!と地面に叩きつけられた。 その衝撃で、グラエナの体に付着していた大量の唾液も、一緒にまき散らされる。 思わぬ相手に食事を邪魔されたボーマンダは、 痛みを堪えながら、ゆっくりと立ち上がろうとしているカイリューに怒りをぶつける。 「なんだテメー ジャマする気かっ!? あーん」 「イテテテテッ・・・くそよくもやりやがたな ってあぁ?!なんだよ」 ボーマンダとカイリューはお互いに睨み合い。 今にも戦いが始まりそうな雰囲気が広がっていった。 そんな2匹の注意がそれて…… 今がグラエナにとって、逃げ出す絶好のチャンスのはずなのだが…… 「う…くっ…!」 全身に絡みついたボーマンダの粘着性の唾液が…… グラエナの動きを妨げ、上手く動くことが出来ないでいた。 それだけではない……散々ボーマンダの口の中で弄くり回され、体力も限界が近づいていた。 その様子を遠くでエーフィーが何もすることが出来ずに見ていた。 上手く超能力でカイリューを投げ飛ばし、 ボーマンダから助け出すことが出来たのだが…… 「グラエナさんっ……」 (しまった……悪タイプだから念力が通用しない…… ) 何とかグラエナをボーマンダとカイリューのいる危険な場所から逃がそうと、 先ほどから何度も超能力を使っているのだが、まったく手応えが無い。 その内、心の中で自分の馬鹿さ加減に呆れながら…… グラエナが悪タイプだと言うことを思い出した。 もう、ここからでは何も手出しも出来ず…… 自分からあの場所へ迂闊に近づくことも出来ず…… 今のエーフィーに出来ることは、様子をうかがっていることしかできなかった。 その間にもボーマンダとカイリューの喧嘩は白熱していき…… お互いに顔をつきあわせて睨み合っていた。 「ああ? テメーがぶつかってきたんだろうがっ!」 「ジャマをしようとしてぶつかったんじゃねぇじゃねぇ。あのエーフィに飛ばされたんだよ・・・」 エーフィのいる場所を指さすカイリューだったが、 先ほどのエーフィーにされた事を思い出し少し震えてしまった。 しかし、そんなことには、まったく興味のないボーマンダ。 カイリューの指さす方を見つめて……エーフィーの姿を目にとらえた。 「ん……エーフィ? あ、アイツかっ! ヒトのメシをよくもジャマしやがったなっ!」 本当に怒りをぶつける相手を見つけて、 ボーマンダはバサッと音を立てて翼を広げ、空に浮かび上がった。 一瞬ためるように翼を羽ばたく寸伝で止めて…… 一気に羽ばたいて空を駆け抜け、エーフィーのいる場所に向けて突進し始めた。 エーフィーは自分に向かってくるボーマンダを冷静に見つめていて…… 一瞬だけこっちを見ているグラエナの方に目を向けて視線を合わせる。 (グラエナさん……逃げて!)と自分の意志を込めて…… それを、エーフィーのかけてくれた優しさを正確に受け取る。 心の中で一言……(エー…フィ…)と名前を呼び、 最後の力と気力を振り絞り、グラエナはフラフラしながらも何とか立ち上がった。 それを見ていた者がいた事が…… 「イテェ〜な・・・を?!弱ってるグラエナ発見!!」 痛そうに頭を振っているカイリューに見つかってしまったのが グラエナの不運につながってしまった。 「あいつも食うならちゃんと食えよなぁ〜 まあいいや、俺が変わりに食うか。」 グラエナの体にカイリューの大きな手が掴みかかろうと伸びてきて…… 「……くそっ…!」 今の自分がいても何も出来ない。 それが分かっているグラエナは、感傷を振り切り渾身の力で駆けだそうとした。 しかし、エーフィの身を心配して、一度だけ振り返ってしまう。 そして、目に飛び込んできた光景…… 「テメーからエサにしてやる!」 「エサ、ですか……さて、どうでしょうかね!?」 エーフィーに向かって大口を開けて突進していくボーマンダに対して、 薄く冷ややかに笑みを浮かべて、迎え撃とうと立ちつくしているエーフィー…… こっちを見ているグラエナに気が付いたのか…… 余裕のある目でグラエナを見て、いつもの笑みを浮かべた。 それを見逃すはずのないボーマンダは、ぐわっ!とさらに大きく口を開いて、 「余所見してる場合じゃねーぞ!」 一気に加速していき、よそ見をしているエーフィーの体全てを口の中に収めて…… バグッ 口を閉じた衝撃で唾液をまき散らしボーマンダがエーフィーを食べてしまった。 少なくともグラエナにはそう見えていて…… それが致命的な隙を作ってしまった。 「他人の心配より自分の心配をしな!!」 隙だらけなグラエナに余裕の笑みを浮かべながらカイリューが叫んだ。 そのまま、大きな手を伸ばしていき…… ガシッ!! カイリューは、動きの鈍ったグラエナをいとも簡単に鷲掴みにすると、 軽々と自分の顔の辺りまで、グラエナを持ち上げてしまった。 「ぐはぁ……!! し、しまった!」 自分の体をカイリューの凄まじい握力でガッチリと握られていて、 逃げだそうと……どんなに体を動かし色々と捻ったりしても、 グラエナは逃げ出すことが出来ない。 無駄な抵抗を続けているグラエナを掴んだまま…… カイリューは、ふとボーマンダの方が気になり、飛んでいった方へと目を向けると…… エーフィーを背中に乗せたボーマンダの姿が目に入り…… 『何やってるんだアイツは……?』と頭を傾げてしまった。 |