族長の部屋は、ファイヤスターが昇った岩の中。空洞になったところだった。
ずっと昔に水で削られたような感じだ。
そこに、僕、ファイヤスター、シンダーペルト、ホワイトストームが輪になった。
いや、どっちかというと僕と3匹が向かい合ってる感じだ。

『さて、ダブルテイル。  ―もっとも今は尻尾一本だが…  ちょっと説明しなくちゃいけないね。』
ファイヤスターが口を開いた。
『まずここはサンダー族のキャンプ。サンダー族の縄張りは後々教えることにしよう。』
『…ファイヤスター?悪いが先に名乗らせてくれ。』
『あ、すみません。先輩。』
先輩? 族長の先輩ってなによ?
ファイヤスターの隣に座っているシンダーペルトのそのまた隣の白い猫が話し出した。
『俺はホワイトストーム。サンダー族の副長だ。よろしく。』
ホワイトストームは、白くて大きい。戦いに強そうだ。
『質問です〜 順番的にホワイトストームが族長になるんじゃないでしょうか〜?』
『順番的…? 意味は分からないが、ファイヤスターは前の族長のブルースターから副長に指名された。その族長が亡くなって族長になったわけだ。』
『ありがとうございます。で、ホワイトストームは族長から指名されたわけですか?』
『そうなるな。』
『あと、前の族長のブルースターと、ファイヤスター。両方名前にスターがつくけど、兄弟とか家族とかなの?』
『そうではないですよ。』
今度はシンダーペルトが答えた。
『族長になると、名前にスターが付くんです。《ハイストーンズ》の《母なる口》の中の《月の石》で、先祖のスター族と対話するんですよ。そこで、新しい名前と九つの命を頂くんです。』
『えぇ〜? またまた…』
信じられなかった。
『本当なの?実は裏でスタッフと打ち合わせでもしてあるんじゃない?』
『…?』
『…?』
『…?』

あ、すべった。ってかここの猫たちには分からないか。
『つまりね、本当にそのスター族とやらと対話ができるのか。それと、九つの命を受け取れるのか。 それが僕には信じられないわけ。』
話を聞いていた3匹は、ああなるほど。とうなずいた。
『スター族がいるのは本当ですよ。森の4つの一族は皆スター族の掟を守って生きてきました。スター族は、看護猫と族長にお告げがあるんです。』
ああ、それで僕が来ることが分かったのか。
『スター族は、今までの先祖の戦士たちの事です。死んだら、星となって私たちの一族を見守っているんですよ。』
『…はぁ』
『…信じてませんね!?』
『うん。』
シンダーペルトは少し怒ったような口調になった。そこにファイヤスターが口を挟む。
『仕方ないさ。シンダーペルト。彼は・・・ えっと、どこって言った?』
『日本の神奈川県。』
『そう。その・・・  ニホンのカナ… なんだっけ?』
『神奈川。』
『そう。 ニホンのカナガワって遠いところから来たばっかりなんだから… なあダブルテイル。カナガワって所にはスター族はいたかい?』
『…いないと思う。』
『本当かい? じゃあ暗くなったら星は見えるかい?』
『星は見えるよ。世界中どこでも見れるのが星だよ。』
『セカイ ってどこの事だ?』
ホワイトストームが質問してきた。
『世界っていうのは… どこってわけじゃなくて…  ここや、日本。それ以外の場所全てをひっくるめて世界 って呼んでるんだよ。 ・・・まあ言い始めたのは二本足だけどね。』
『なんで二本足の言ってることがあなたに分かるの?』
今度はシンダーペルトだ。
『え…? 二本足が喋ってるのを耳にするから… というかそうやって教わった。』
言い終えると、3匹が驚いた眼でこちらを見ていた。
『ダブルテイル… 君は二本足と喋れるのかい!?』
『え? え〜… まあ。とりあえずはね。』
『驚いたな… やっぱりスター族の使いじゃないのかい?』
『だから違うと思う。猫股!』
『猫股は二本足と会話できるのか?』
ホワイトストームが興味を持っている。
『まあ。 ってか猫は結構二本足の言ってることは理解してるよ?』
『…君の居た所の猫たちは随分賢かったんだね…』
『えっとね、それは二本足と一緒に過ごしてるからね。 あ、飼い猫のことか。飼い猫は二本足と一緒に暮らしてるでしょ?だから二本足の言葉が分かるんだよ。でも話すことができるのは猫股からだな。』
『確かにそうだったかもしれない。でもほとんど覚えていないや…』
そっか、ファイヤスターは昔飼い猫だったってダークストライプが言っていたな…
『君があのまま二本足と暮らしてたら何て言ってるのか分かっただろうね。二本足の言葉はこうなんだよ。』
そう言ってから日本語を話してやった。
「ファイヤスター!」
『今のはなんだい?』
『日本語でファイヤスターさ。』
『今のが…』
ファイヤスターはなぜかへこんでしまった。

『まあ… とりあえずさ、スター族が何なのかが未だ分からないんだよ。』
『だから、スター族は、空の星の事です!あの星一つ一つが先祖の魂なんですよ!』
『・・・それでいいや。分かった。』
『そうだ。ダブルテイル。 母なる口へ行ってみないか?』
ファイヤスターが言った。しかし、2匹がぎょっとした様な顔をしてファイヤスターを見た。
『行って何をするんだい?』
『君はきっとスター族と対話できるよ!月の石でスター族と話すんだ!』
『でもいいの?ファイヤスター? そんなことしても…』
『そうだぞ。緊急事態でもなきゃこれはまずいと思う。』
シンダーペルトとホワイトストームは反対している。
『森が荒らされている。それが緊急事態だ。でも皆には内緒にしておこう。明日母なる口へ出発しよう。ホワイトストーム。シンダーペルト。留守の間キャンプを頼むよ。』
『分かった。』
『分かったわ。』
『護衛はグレーストライプとサンドストームについてもらう。僕が後で頼んでおくよ。』
『ちょっと待って。』
話が終わりそうだったので尋ねた。
『何だい?』
『僕が呼び出されたのは、説明だけでいいのかい?』
『ああ。それだけだが… あ、どうせだからキャンプの中も案内しよう。』
そう言って、外へ歩いて行った。
僕は、ファイヤスターについて外に出た。

『まずこの岩がハイロック。一族に話をするときにあそこに立つんだ。基本的に話すのは族長だけだけどね。』
そう言って、ハイロックから数歩離れた大きなシダの茂みの前に立った。
『ここが戦士部屋。君も多分ここで寝ると思うよ。』
中には、雨風の入らない寝床が見えた。
『グレーストライプ、サンドストーム。いるかい?』
そういうと、茂みから灰色の縞のある雄猫とさっきファイヤスターに説教をしたサンドストームが出てきた。
『はじめまして。僕はグレーストライプ。ファイヤスターが見習いのころからの親友さ。まあいろいろあって少しリヴァー族に行ったんだけど戻ってきたんだ。』
『どうも。ダブルテイルです。』
軽く頭を下げて会釈した。
『君たち2匹に、護衛を頼みたい。行先は…』
ここでファイヤスターは声をひそめた。
『…母なる口だ。』
グレーストライプ・サンドストームの耳が同時にピクッと動いた。
『いいかい?』
『ああ。』
『良いわよ。』
『君も来るのかい?ダブルテイル。』
『ああ。なんかスター族とどうのこうのって… よく分かんないけど。』
『僕も中に入った事は一回も無いんだ。羨ましいなぁ!』
僕は、何と答えようか迷ったが、ファイヤスターが先に行ってしまっていたので急いで追いかけた。
『それで、そこが保育部屋。母猫とだいたい6ヶ月位までの仔猫が過ごす部屋さ。』
だいぶ頑丈に守られている。仔猫のためだろう。
『それで、あそこに看護猫の部屋がある。怪我したらあそこに行くと良い。』
岩と岩の隙間があり、そこから奥は暗くて見えなかった。
『あ、そうだ。君はネズミを食べたことあるかい?』
『いや?無いけど。』
『じゃあ食べてみなよ。初めてだろう?』
『う… うん。 いや。良いよ。自分で捕ってその分を頂くことにするよ。』
『いや。それは一族の掟に反するよ。』
ファイヤスターが咳払いをして、演説的な話を始めた。
『一族の猫たちは、一族のために獲物を捕るのさ。自分のためじゃなくってさ。だから、獲物を取ったらそこの獲物置き場に獲物を運んで、そこに置くんだよ。』
尻尾で、獲物の山を指した。
『だから、自分で捕って自分で食べるなんてやめたほうがいい。』
『あ… うん。分かった。じゃあ獲物、少し頂くよ。』
『好きなのを取ると良い。僕はハイロックの下で待ってるよ。』
そう言って、ファイヤスターは獲物の山からハトを取って持って行った。

改めて獲物の山を見ると、少し気が引けた。
ちょっとおっかない…
悪く言えば死体の山。
まあ良く言って獲物の山なんだけども…

しかし、山といっても、あまり獲物が残っていない。
僕は、獲物の山のネズミの首元に爪を刺し、爪に付いた血で地面に小さくネズミの絵を描いた。

―絵師の術。 意思の込められた絵を具現化する。

地面の上に、小さなネズミが横たわっている。
僕はそれを咥えてファイヤスターの元へ行った。


    ※    ※    ※



彼は本当に信用できるのであろうか?

ファイヤスターはハトを食べながら考えていた。

彼は、僕が死にかけたのを助けた。
しかし、それがサンダー族から信用を得るために行った作戦だったら…?

だとすればダブルテイルの作戦は見事に成功し、一族に仲間入りし、好き放題できる。
そうしてサンダー族は…


ファイタスターは、頭を振り、自分のひねくれた考えを追い出した。

ダブルテイルはここに来たのが本当に初めてなんだ。
僕は、洞察力がなかなかある方だと思っているが、彼は怪しい動きは全くなかった。
もし、ダブルテイルが別の一族の猫だとしたら、こちらに嫌な視線を送ってくるはずだ。
しかし、ダブルテイルが送ってきたのは好奇にみちたまなざし。そして尊敬のまなざしだった。

…彼は信用していいだろう。

ファイヤスターはまたハトを齧った。
何ともいえぬ美味しさが口の中に広がる。

『…ファイヤスター?』
いきなり声をかけられ、跳びあがってしまった。

『どしたの…? ぼうっとしてたけど。』
『いや… その… すこし考え事を…』
『そうなの。 隣を失礼するよ。』
そう言って、近くに座った。

彼は、とっても小さなネズミを持ってきていた。

『ダブルテイル。遠慮しなくていいんだよ? なんだまたそんな見習いの食べるような小さいのを持ってきちゃったんだい?』
彼は、少し笑ってこう言った。
『僕の居た所の二本足の言葉に、働かざる者食うべからず。って言葉があるんだよ。 つまり、何もしちゃいないなら食べる権利はないぞっ!って意味かな。』
そう言って、ネズミを齧った。
『美味しいんだね!しばらく他の物食べれないや!』
『…』
彼は、陰謀があるようには全然見えなかった。

…ただ単純なだけに見える。
『まだ皆が、君の事は信用していないと思っていた方が良いよ。一族の猫以外はあまり信用されてないんだ。 しかも、少し前、一族の中で裏切りが起こったからみんなすこしピリピリしている。』
『へぇ。裏切り。 どんなだい?』
ネズミの肉を噛みながら聞いた。
『あのね、僕の前の族長が、ブルースターだったは言ったよね?』
『うん。君の事を副長に選んだんだろ?』
『その、僕が副長になる前に副長だったタイガースターがブルースターを殺して族長になろうとしたんだ。』
『うーん… こんなところに来てもそんな事があるのか…』
ダブルテイルは一匹で唸っている。
『で、当時のタイガースターの悪事に気がついたのはレイヴンポーと僕だけだったんだ。』
『レイヴンポー?』
『タイガースターの元弟子さ。今は単独猫として暮らしている。』
『ふぅん… なるほど。』
『それで、タイガースターの悪事を暴こうと行動したら、レイヴンポーは命が危なくなって僕とグレーストライプで単独猫の元へ行かせた。』
『うんうん。』
『うん。バーリーっていう単独猫がいて、そこに今も一緒に住まわしてもらってる。』
『なるほど。で、タイガースターの悪事は?』
『あいつは酷い奴だよ… あいつのせいで何匹の仲間が傷ついて殺されたのか…』
『そこまでやったんだ… 悪いけど聞かせてよ。』
『いいよ。』
そう言ってからハトを食いちぎった。
それを見て、ダブルテイルもネズミの肉を齧った。
…彼はあんなちいさいネズミで足りるのだろうか…?
『まず、タイガースターは、僕が一族に入ったときの副長、レッドテイルを戦いにまぎれて殺したんだ。それを、レイヴンポーが目撃してた。』
『レイヴンポーはなんで皆に言わなかったんだい?』
『彼はあの時は恥ずかしがり屋で、話すのも苦手だったんだ。それで、一族に言う勇気が無いまま、タイガースターの耳に届いて、なんとか始末しようとしたんだ。』
『で、その時に、単独猫の元へ逃がしたのか。』
『うん。その後は段々と僕が狙われて… 川に落とされたり、敵の襲撃で、僕が負けかけてるところを黙って見てたりした。』
『悪役代表だね…。 でも狙ったのはブルースターじゃなかったの?』
『うん。サンダー道にブルースターを呼び出して、怪物に轢かせようとした。他にもブロークンスターと手を組んで、キャンプを襲わせたりした。』
『サンダー道?あとブロークンスターって誰だい?』
『サンダー道は、怪物の走る道のこと。シャドウ族との縄張りの境目にちょうどあるんだ。』
『ああ、道路の事ね。 …ああ。続けていいよ。』
こっちが分からなくて首をかしげたのを見て、ダブルテイルが言った。
『で、ブロークンスターは元シャドウ族の族長。随分悪い奴だった。』
『例えば?』
『そこまで覚えてないけど、生まれて間もない仔猫を戦士として戦わせていた。さらに、ウィンド族を追い出し、一族やスター族のしきたりを踏みにじったんだ。』
『へぇ・・・ でもファイヤスター。落ち着こうよ。 やたら力んでるよ?』
言われてはっとした。体中に力が入って緊張している。
多分、思い出したくないことを話しているからだろうか?

とりあえす、もう一口ハトを齧った。
ダブルテイルも齧ったが、ネズミは殆ど残っていなかった。

『それで、シャドウ族を追放されて、その後しばらくして、ここに襲撃してきたんだ。でも、ここを守り抜いて、奴らを追い返したんだ。 でも、ブロークンスターは光を失った。目をやられたんだ。 別に奴を殺す必要は無かったから一族に置いておいたんだ。 そしたら、そこでタイガースターに浮浪猫の居場所を教えてしまったんだ。』
『それで、キャンプに襲撃に来たのかい?』
『ああ。タイガーズターの裏切りによって、ブルースターは一族全員信用しなくなった。』
『あ〜あ。でもショックだったんだろうね。』
『うん。タイガースターの事はとっても信用してた。それで、僕が副長に指名されたんだけど、ここで一族のしきたりに背いちゃったんだ。』
『どんなこと?』
『真夜中を過ぎたのに、副長を任命しなかったんだ。真夜中になるまでに副長とかを任命するのがしきたりなんだよ。でも、僕は真夜中を過ぎてから任命された。』
『仕方ないんじゃない?』
『でも、一族の皆が、元飼い猫が副長になるのに少し反感を抱いていたし、なによりブルースターがしきたりを破ったことに何よりも驚いていた。』
『ふぅん。』
『これが、最近の裏切りさ。 で、タイガースターがサンダー族を追放されたんだけど、まだサンダー族を狙ってたんだ。』
思い出しただけでぞっとした。
急いでハトを齧った。
ダブルテイルは、ネズミを齧らなかった。もう残っていない。
『彼は、シャドウ族で、ブロークンスターがいなくなって、ナイトスターが族長になった所に、シャドウ族の仲間入りをした。 ナイトスターは、族長になったけど、ブロークンスターがまだ9つの命を使い切って無かったから、9つの命を受取れなかったんだ。』
『そうなんだ…』
『で、シャドウ族で、グリーンコフっていう病気が流行ってナイトスターが死んでしまった。 そして、タイガースターがまんまと族長になった。』
『ありゃま… とんだ出世話だね…』
『うーん… 出世 っていう意味は分からないけど… とにかく、そうなってからも、サンダー族に攻撃し続けたんだ。 今も、何やるか分からないよ…』
そう言って、足元を見た。
『じゃあ、そのシャドウ族の族長が、今はタイガースターなの?』
『うん。 で、さらに追い打ちがあったんだ。』
僕はダブルテイルの黄色い瞳を見た。
『ここに火事があったんだ。』
『森に火事が…?』
『うん。 このキャンプが全部燃えた。』
『ふぅん…』
そう言って、ダブルテイルは、口をあけて、周りの臭いを確かめた。
口をあけるのは、上顎に臭いを感じ取る器官があるから。猫の感覚の中で一番冴えているところだと思う。
『いや… 結構前だから残って無いと思うよ。』
『ほんとだ。ほんの少ししか感じないね。これだと1月前くらい?』
『…』
驚いた。
彼は長寿なだけではなく、鼻も効くのか。 それもすごく敏感に!
『うん。ほんとに1月前だよ。でも僕は臭いを感じなかったよ。』
『そう?まあ新しい臭いのほうが多いからね。 で、そのあとどうなったのさ?』
ダブルテイルが急かしてきた。
『火事で、看護猫と長老を1匹ずつ失って、ブルースターがスター族に見捨てられた。と思いこんじゃったんだ。 それで、もう誰の事も信用しなくなっちゃって…』
『そりゃ思うわな…』
『でもここからが不思議なんだ…』
『うん?』
『ブルースターが、ふらりとシャドウ族のキャンプのほうへ歩いて行って、姿を消しちゃったんだ…』
『そうなんだ… シャドウ族は何て言ってるの?』
『いや。突然ブルースターがいなくなって、臭いをたどったら、シャドウ族のキャンプに繋がってて、縄張りの境目には、シャドウ族の戦士がいたんだ。』
『何て言ってたの?』
『お前の所の族長の臭いが残ってるけど、縄張り内では誰も見かけてないぞ? って言ってたんだ。』
『おお… 怪談話だな…』
『なにそれ? とにかく、ブルースターが消えてしまったんだ。』
『臭いたどったの?』
『シャドウ族に辿ってもらったけど、キャンプの裏に続いたままどこかでぷっつり途絶えてたんだって。』
『シャドウ族が怪しいんじゃないの?』
『でも、シャドウ族も驚いてた。いきなり消えたことに… で、その日の夜に、看護猫が、スター族から、ファイヤハートを族長にするように。 と予言を受けたんだ。』
『なるほど…』
『夢に出てきたのはブルースター。理由は言わなかったけど、スター族の仲間入りをした。って言ったんだって。』
『そうなんだ…』
『で、最近もたまにシャドウ族の縄張りに行ってしまって、帰ってこない猫がいるんだ…』
『他の部族は?』
『他の部族にもあるらしい。でもサンダー族が一番多い…』
『シャドウ族は?』
『それが全く無いんだよ。』
『完全にシャドウ族の仕業じゃんか。』
『タイガースターは、シャドウ族ではない。と主張してるけど…』
『タイガースターは信用できないんだろ?』
『そう思って、別の戦士や見習いに内密で聞いてみたんだ。みんな、口をそろえて絶対に違う。って。』
『う〜ん… 謎だね。』
もう一口ハトを齧ると、ハトはもうほとんど無くなった。
『あ、そうそう。ダブルテイル。 首輪は何とかならないかい? 他の部族にも馬鹿にされっぱなしだぞ?』
『そっか。んじゃ…』
そう言って、首輪に前足の爪を引っ掛けた。
爪で切れるのだろうか?
疑問だったが、見ていると、首輪が青く光って…

消えてしまった。


『…』
『驚いた?首輪は今はここにあるんだよ。』
そう言って、前足の爪の一本を繰り出した。

その爪には、青い紐のようなものが付いている。
『首輪を小さくして爪に付けたんだ。これならだれも気付かないだろう?』
『…君はすごいんだね… ホントに…』
『あ、仔猫たちの前では使わないことにするよ。僕もやりたい〜!なんて言われても困るからね。』
『ああ。そうしてくれ。』
『皆の前でもあまり使わない方が良いよね?僕も化け物呼ばわりは御免だし。』
『さあ… ちなみにどんな事ができるんだい?』
『いろいろ。そのうち教えるよ。』
とにかく不思議な奴だ。本当にスター族の使いじゃないだろうか?
そしてもう一つ、疑問があった。
『なあダブルテイル。さっきから気になってたんだが…』
『何?』

『さっきから言ってる”なるほど”ってどういう意味だい?』

ダブルテイルはガクッとよろけて転んでしまった。

 

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